2020.08.24
2020.08.24
ブレークダンスのNPO法人「キングコブラ会」
両手を床に付けかがんだ姿勢から左足を前に引き体を左に1回転、真っすぐ立ち上がると五体投地のように前へ倒れ、また回転する。「もう一回。はいワン、ツー…」。男女12人が息を合わせ激しく体を動かす。7月半ばの木曜日夜、京都市上京区の児童養護施設「和敬学園」1階の多目的室で、ブレークダンスの訪問レッスンが続いた。
指導するのは「キングコブラ会」(右京区)理事長の大塚公平さん(38)と副理事長の西川佳希さん(37)。参加したのは同園で暮らす小中高生8人と、担当のケアワーカー2人。体温測定や換気、マスクなどコロナ対策を万全にして全員が予定の1時間半、みっちりと汗を流した。
「レッスンは、かなりハイレベルです。子どもたちは体の動きが鋭く疲れ知らずで、覚えも早い。発表会に向けた練習ですが、みんなで心を一つに楽しんで続けることを第一の目的にしています」。大塚さんは、子どもたちの体調に目を配りながら「楽しむ」を強調した。
ブレークダンスは、米国発のヒップホップ・カルチャーの一つ。曲に合わせた激しい動きが特徴で、スポーツ性が高く、パリ五輪の追加種目候補にも挙がっている。
京都でブレークダンスの普及に携り、西川さんらと共に同市内の有力チーム「BODYCARNIVAL(ボディーカーニバル)」で腕を磨いた大塚さんは看護師が本職。20代でインドに渡り貧しい子どもたちにダンスを教えた経験も持つ。2011年の東日本大震災で慈善イベント開催の要請を受けた際、自分たちらしい寄付やボランティアのあり方を仲間と再考。「訪問レッスンこそ最適」と気付き、右京区役所に相談すると和敬学園など市内の児童養護施設を紹介された。すぐに指導を始め訪問先はいま、3施設に増えた。
施設側も、低学年まで多数がリズムに乗って一緒に踊れるブレークダンスを歓迎。レッスンに参加する和敬学園のケアワーカー、デラモス・拓也ぺリフェクトさん(23)は「コミュニケーションの手段として最適。私たちと子どもたちの距離も縮めてくれる」と効果を指摘する。ダンスに魅せられキングコブラ会のレッスンメンバーに入った施設職員も2人いる。
訪問レッスンは3施設とも月2回を基本に、同会のメンバー2~3人で指導している。成果を示す発表の場は京都市の文化イベントや有名寺院での芸術祭などがあり、毎年、3施設から参加。子どもたちにとって、覚えた技を晴れ舞台で披露することは仲間意識と自信を養う絶好の機会になっているという。
同会では以前から、訪問レッスンを全国の児童養護施設などへ拡大する計画を検討してきた。ただ、レッスン活動には、参加する子どもたちの個人情報保護に細心の注意が必要で、「より多数に安心して楽しんでもらう」ための態勢づくりを急いでいる。
キングコブラ会
2011年に京都のブレークダンス愛好家たちが結成。18年、NPO法人になった。役員・スタッフ計10人。京都市内の児童養護施設3カ所で訪問レッスンを続けるほか、ブレークダンスの発表会やイベントの企画運営、友好団体との合同ワークショップなどを開催。今年7月、京都府も参画する「京の公共人材大賞」を受賞。Eメールkingcobrakai1027@gmail.com