ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

悩み抱える子の息抜きの場/子ども食堂、困窮家庭支援も(2022/03/21)

2022.03.21

  • 広がる 地域の輪

NPO法人「そのべる」

毎週1回開く子ども食堂で、事前に調理法などを確認するそのべるメンバーと子どもたち(昨年11月6日、南丹市園部町美園町・日本キリスト教団丹波新生教会)=提供写真

礼拝日以外は、ひっそりとした日本キリスト教団丹波新生教会(南丹市)で5年前、牧師の宇田慧吾さん(32)は教会前の通学路を歩く小中高生を眺め考えていた。「元気な子もいれば、心の不調を抱えた子どももいるはず。何か支援ができないか」

教会の使わない部屋を毎日、放課後の子どもたちの自由な居場所に開放するアイデアは、そこから生まれた。「おやつが出て卓球台がある。ゲームや宿題もできる」。口コミが広がると、中学の卓球部員らが一団で来場。小学生、高校生も続き1カ月で延べ300~400人にも達した。

しばらくすると、予想通り「学校に行きづらい」「人と関わるのが苦手」という子どもがぽつぽつ現れ、悩みを語り始めた。宇田さんが寄り添い相談に乗り続けるうち、地域の保護者や中学校のソーシャルワーカーから「不登校・ひきこもりの子どもや若者が過ごせる場も作って」と要請が舞い込んだ。

「そのべる」は、そんな子ども支援に賛同する保護者らが集まって2019年に発足した。教会を本拠に、居場所づくりのほか、不登校・ひきこもりの支援、子ども食堂、住宅困窮者の居宅確保支援へと活動範囲を広げている。宗教施設の中という特別な環境だが、入信の勧誘や布教とは切り離され、教会の地域貢献活動と位置づけられている。

「今の時代、どんな子どもにもひと息つける場は欠かせません。ここは学校ではないので、何かを求めることなく無条件で受け入れ、安心して楽しく過ごせる場に徹しています。結果として、他人や社会とうまく関われる力がつけば幸いです」。法人の理事でもある宇田さんは「息抜きの場」を強調する。

居場所が開かれるのは日、月曜を除く週5日。心の課題を持たない子どもは、大人が干渉せず部屋で自由に過ごす。不登校・ひきこもりの子どもと若者は別室で、ゲームや料理、農作業などを共にして互いの信頼関係を築くのが基本。こちらは18~20年度で延べ約900人が参加した。

初めは会話も困難だった不登校の生徒が、年下の子どもたちの支援を手伝うことで力を回復。今春、地元事業所に就職を決めるうれしい出来事も起きた。

「そのべる」の中心的な支援スタッフ、Sさん(25)は小学生から不登校傾向があり、22歳で教会の居場所に通い始めた。支援を受けて自信を取り戻し昨年、児童施設に就職を果たしたという。「私自身、ここで話を聞いてもらえたことで救われました。経験者として後輩たちの心の内はよく分かります。できるだけ寄り添い悩みや苦しみを、包み込んであげる存在になりたい」と話す。

保護者の強い要望で19年に始めた子ども食堂(週1回、無料)は、コロナ禍で1年休み、21年から再開した。貧困や不登校など「最も来てほしい子ども」を優先して、再開後は会員制を導入。スタッフ8人による運営で毎回、約20人が集まる。

活動4年目の今、課題は子どもたちの心の不調を素早くキャッチして不登校などに陥る前に寄り添う態勢を整えること。今後、地域や学校、保護者らとより緊密な連携を図ることにしている。

NPO法人そのべる
2019年、南丹市内の不登校生徒の保護者らで設立。子どもの居場所作りと、不登校・ひきこもり支援、子ども食堂、住宅困窮者の居住支援も手がける。21年、京都府の「居住支援法人」に指定。会員13人。事務局は南丹市園部町美園町の丹波新生教会内。