ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

カフェ評判、地域に溶け込む/授産所融合、子どもの居場所にも(2022/07/12)

2022.07.12

  • 広がる 地域の輪

社会福祉法人白百合会

カフェの人気スイーツをアピールする梅原さん

本格的なカフェと障害者の授産所を融合させたユニークな就労継続支援B型事業所を京都市内の2カ所で運営し、障害者の自立を手助けしている。その一つ、11年前にオープンした「リ・ブラン京都中京」は、京町家やマンションが立ち並ぶ中心部「田の字」地区の一角にある。一階はカフェ。テラスの大窓から光が差し込む明るい店内には、12席のいすとテーブル。それを障害者2人と職員で切り盛りする。母の故楠本浩子さんから理事長を引き継いだ楠りつこさん(60)は「地域の人とふれあってこそ、障害者が地域に溶け込める。そういうきっかけの場にしたかった」と狙いを語る。メニューはコーヒーやジュース、手作りのスイーツなどバラエティー豊か。看板は「アキオブレンド」と銘打ったコーヒーだ。どこにも負けないおいしいコーヒーを出したいという願いに応え、京都の老舗イノダコーヒ(中京区)の故猪田彰郎さんに障害者やスタッフを直接指導してもらった。スタッフが笑顔でいれてくれたコーヒーは、香りも味も素晴らしい。スタッフの梅原千明さん(27)は「こうして仕事ができ、うれし過ぎです。お客さんと話すのが楽しい」と話す。京都市と姉妹都市のザグレブ(クロアチア)にちなんだ洋菓子のクレームシュニッタは金曜に9個限定で販売するが、即完売の人気だという。

全国女子駅伝の記念品用の刺しゅうに取り組む利用者(京都市中京区、ル・ブラン京都中京)

作業場になっている二階に上ると、10人ほどが黙々と刺しゅうに取り組んでいた。さらし布に金閣寺や二条城など京都ゆかりのデザインを刺しゅうした「花ふきん」は、リ・ブランのヒット商品。その技術が目にとまり、全国女子駅伝(京都新聞共催)で配る記念品のポーチにあしらう刺しゅうを京都北ライオンズクラブから依頼され、目下作業の真っ最中。楠理事長は「障害者だからといって品質に妥協はしません」。5年前からは、地元の小学生を対象にした居場所づくりと学習支援の事業も始めた。ひとり親家庭や共働き家庭の子どもたちに週2回、夕食を提供し、学生スタッフが宿題などをサポートする。長女で学生統括マネージャーを務める楠万由子さん(26)は「さまざまな事情で苦しんでいる保護者の支えになりたい。地域の宝である子どもたちにも、いろいろな体験の機会を提供したい」と話し、パーティーや英会話レッスンなど多彩なイベントを企画する。こうした取り組みに共感が広がっている。谷口製麺所(左京区)は月1回、食材と器具を持ち込んで子どもたちに振る舞ってくれる。第一生命保険京都総合支社からは毎週、数人の社員が調理の手伝いに来てくれる。「ありがたい。地域の理解があってこそ」と楠理事長。次は、中学生以上を対象にした事業も考えてみたいという。