ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

研修重ね 安心できる子育てを/食物アレルギー、確かな知識普及(2022/09/19)

2022.09.19

  • 広がる 地域の輪

認定NPO法人FaSoLabo京都

アレルギーの親子も気軽に遊べるよう運営されている「つどいの広場」(京都市中京区)

わが子の食物アレルギーに、どう対処すればいいの? そんな悩みに応える当事者支援と、確かな医学的根拠に基づいた知識の普及に取り組んでいる。

2005年、創設者となる小谷智恵さんは、重度の食物アレルギーの長男を受け入れてくれる保育園探しに疲れ果てていた。何よりつらかったのは、周囲の無理解。「アレルギーのある子の育児のしんどさを、みんなに知ってほしい」。しんどいこと、うれしいこと、出会い…。そんなことをつづったニュースレターを手作りし、京都市内の保健所を回って置いてもらった。1年ほどすると、同じ悩みを抱える人たちから反応が返ってくるようになり、集まった母親たちで自然に会ができた。

転機は、市内の小学校で開いたアレルギー対応食の試食会だった。自分たちで見つけたパン店などに頼んで出店してもらい、アレルゲン除去食を実際に調理し、試食してもらった。来場者のなかには医師や栄養士もいて、協力を申し出てくれた。「メディアの取材依頼も相次ぐようになった。どんどん人がつながってきた。もうやめられない」。メンバーで話し合い、NPO法人化を決めた。

中心に置いた事業が、アレルギーに詳しい小児科医を講師とする研修会だった。保護者だけでなく、保育士や行政関係者らが毎回大勢参加した。

「当時ステロイド剤は怖いものというイメージがあって、民間療法に頼る保護者も少なくありませんでした。適切な治療を受けるには、正しい知識と情報が必要なんだと痛感しました」。関わった医師たちが「民間療法に流れるのは僕たちの力不足」と率直に語る姿にも心を打たれた。

アレルギーの子どもは大勢が集まる児童館などに行きにくい。そこで「行きたいとき、いつでもいける居場所を」と、行政の委託を受け、ソーシャルビジネスとして中京区内のビルの一室に「つどいの広場」を開いた。

地域の親子なら誰でも利用できるが、入室時は入念に手指を洗い、うがいをし、粘着ローラーで服に付着したほこりやアレルゲンを取り除く。「ちょっとした手間ですが、安心して利用してもらえます」とスタッフの粟絵美さん。

新型コロナウイルス感染症の流行で止まっていた活動も、ようやく動きはじめた。8月には2年ぶりに試食会を開き、特定原材料7品目と大豆を使わずに、蒸しギョーザをつくった。研修会も年度内に再開を目指している。

小谷さんは最近、研究者と協力して食物アレルギーの若者や保護者、医療関係者らにアンケート調査を始めた。「アレルギーゆえに自己肯定感が低い子がいる。これまで親への支援が中心で、子どもの声を聞いてこなかったのではないか」。反省を込めつつ、子どもの力を信じ、子離れ・親離れへの道筋を描く新たな取り組みだ。

認定NPO法人FaSoLabo(ふぁそらぼ)京都
食物アレルギーの子どもとその家族と生活の質(QOL)向上と、食物アレルギーへの社会の理解を進める活動を展開している。理事長は医師の楠隆龍谷大教授。