2023.06.13
2023.06.13
NPO法人「そらいろプロジェクト京都」
NPO法人「そらいろプロジェクト京都」は、発達障害などの影響でじっと座っていられなかったり、ドライヤーやバリカンを嫌がり、髪を切るのが苦手な子どもたちに、混乱させずに散髪できる状況を整えるための活動を続けている。赤松隆滋(りゅうじ)理事長(48)が京都市伏見区で営む美容室ピースオブヘアーを拠点に、この「スマイルカット」の取り組みを続け、全国で70店舗が参加している。
赤松さんは「一言で発達障害と言っても人それぞれ。その子の苦手なことが何かを知る、障害の特性を知るのがまず必要。わがままでカットしないのではなく、しかるべき対応が出来ていないこともある」と言う。障害に対する偏見をなくし、気持ちに寄り添う大切さを伝えようと、講習や講演会を開き、理美容師らに心構えや方法を伝授している。
自身が以前、小学校の先生志望だったので、美容師としても子どもと関わりたいと、児童館で子どもの前髪カット講座を開いたのが始まり。その時は発達障害の知識がなく、失敗した。それを契機に発達障害を調べ、さまざまな特性、苦手があることを知り、それぞれの子がどうすれば最後まで散髪できるか工夫を凝らそうと独学を始めた。歯科医師会が障害児向けに使う絵カードを参考に、散髪の手順を表すカードも作成するなどし、口コミやSNS(会員制交流サイト)などで広まり、美容室には他府県からも障害のある子が次々に訪れるように。
「ママにもできる!チャイルドカット」と呼ぶ取り組みは、美容院好きの子を増やそうと、幼児などの前髪の切り方をお母さんたちに教えている。百回を超すまでは赤松さん自身が講師を務めた。
カットが苦手な子を題材にした絵本も友人のイラストレーターの作画で出版。その絵本を児童館などで読み聞かせる「えほんらいぶ」も始めた。ユニークなのは「星髪(せいはつ)戦士ピースマン」の取り組み。京都市内の大学生の協力で、衣装やマスクも作り、ぼさぼさ星人「ボーサボーサ」相手のヒーローショーをイベントなどで行っていたが、今は「コロナ禍」で中断状態だ。
理美容師向けの教科書に発達障害児者対応の記述を求める活動にも取り組む。そのためにこうしたニーズがどれだけあるかを調査してまとめたり、赤松さんは論文にしようと通信制の大学院で学んでいる。10人ほどの法人メンバーには美容師仲間をはじめ、大学教員や福祉関係者らもいる。専門知識も取り入れ、さまざまな分野のノウハウを生かす。
「幅広い人が集まり、加わってくれていろんな物の見方や知恵をいただいた。活動では、厚生労働省を訪ねたり、情報を集めたりと実務作業が大変だった。でも、人のつながりと広がりができ、プラス思考で前に進むきっかけになり、ありがたかった」と赤松さん。
「コロナ禍」で、講演会は激減し、チャイルドカットなどの活動も大半が休止状態。「唯一、オンラインで講習会を始めたので、地理的に参加が難しかった人が参加できるようになり、けがの功名ですかね」と赤松さん。やはりプラス思考で前向きだ。
そらいろプロジェクト京都
2010年にスマイルカットを開始。14年、NPO法人を設立。問い合わせはinfo@sora-pro.jp