ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

障害者の店員 接客やりがい/寄付で集まる品 SDGs貢献(2024/06/17)

2024.06.17

  • 広がる 地域の輪

リサイクルショップ「楽々堂」

多種多様な品物が店の前に並ぶ楽々堂(3日、京都市左京区)

京都市左京区にある「楽々堂」は、市内唯一の障害者が働くリサイクルショップだ。女性服やアクセサリー、食器、カバン、帽子、インテリア類、つえ、CDや古いレコードまで多種多様な品物が店の前や店内の棚に所狭しと並ぶ。未使用のガラス製品や陶器類も多い。店舗スペースに限りがあるので長く売れずに残る物などは「ご自由にお持ち帰りください」コーナーもある。値段はメンバー(利用者)が主体的に決めるので10円以上500円ぐらいと極めて安価だ。

就労継続支援B型事業所で精神障害のある20人ほどが登録。1日平均10人ほどが、ほどいた着物地で自主商品の袋物などを作る手芸や、お香商品を包む下請け作業などを含め、3人のスタッフ(職員)と一緒に働いている。

商品はすべて寄付で集まる。年配の人が家の片付けや引っ越しの際に寄託してくれるものも多い。申し出があれば、市内各所にメンバーとスタッフが車で引き取りに出向く。家具や家電製品はスペースや安全面を配慮して受けていないが、ブランド品も交じり、価値判断や値付けに迷うこともある。

小型家電やゲーム類などはあり、「1人暮らしなら生活できるほどすべてそろう」とメンバーは言う。商売以外にも楽しみはある。寄付の中には思わぬ物も混じり、仕分けの時に「これ何やろ」とメンバー同士で話が弾むこともあり、「仕事をしていると病気のことなどが忘れられる」と口をそろえる。

B型事業所と知らずに値切る人もいるが、そんな時には値札で対応。お客さんとの対話や関わり、対面での接客が利用者の社会適応のトレーニングにもなると積極的にとらえている。男性メンバーが、女性服の各部の名称が分からず、接客に困ることがあるのもご愛嬌(あいきょう)。銀閣寺や法然院、「哲学の道」など観光名所が遠くない場所にあるので、外国人観光客がふらりと店に入って来ることもある。片言の英語で対応したり、通じずとも「接するのが面白い」と歓迎したりする。

運営するNPO法人「さまさま」が、別の場所で作業所を始めて30年。開設時は精神障害者の支援施設は京都市内でも少なく、草分け的な施設だった。当時は障害者の働く「作業所」では、下請け仕事の内職などが多く地域とのつながりも少なかった。他府県の例なども参考に「利用者の工賃(給与)が多く払えるようになるかな」と約25年前に現在地の店舗付き住宅に店を出した。始めてみると、接客などを通じて利用者側にもやりがいが得られるなど良い影響が出て、予想以上にうまくいき、地域や社会との接点、つながりもできた。

全般を切り盛りするサービス管理責任者の丹羽陽子さん(44)は、「大げさに言えばリサイクルを通じてSGDsにも役立っているかな」と笑う。さらに「メンバーは状態が改善すれば通うこともなくなる通過施設なので、入れ替わっていくのですが、小規模な事業所ながらスタッフの定着を図り、続けていきたい」と話している。

楽々堂
 月曜から金曜の午前11時から午後4時まで営業(土曜、日曜、祝日は閉店)。京都市左京区浄土寺下南田町。075(761)1200。NPO法人「さまさま」は他にB型事業所を運営している。