2020.07.06
2020.07.06
臨床工学技士
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
新型コロナウイルス感染症の治療に用いられている体外式膜型人工肺「ECMO(エクモ)」、その治療機器を操作するのが臨床工学技士と呼ばれる医療従事者です。
臨床工学技士は厚生労働大臣の免許を受けて医師の指示の下に血液浄化装置、人工呼吸器、人工心肺装置などの生命維持管理装置の操作および保守点検を行う職業で1988年に誕生しました。現在では全国で2万4000人程度が幅広い分野で活躍しています。最も多く配置されているのが血液透析分野で、その他には、ICUなど急性期病棟や救急外来、手術室、また心臓カテーテル検査室や内視鏡室、現在は在宅の機器管理にまで及んでいます。これらの高度に発展した医療技術を医学と工学の専門知識を用いて医師や看護師など他職種と連携しながらそれぞれの治療に携わっています。
新型コロナウイルスの治療で注目された「ECMO」は、人工呼吸器を用いても体内の酸素化が十分に行えない場合に、血管にカニューレ(管)を入れて血液を体の外に循環し、人工肺を用いて血液に直接酸素を供給する治療法です。ECMOを使用している間は、新型コロナウイルスの重症肺炎の治療に専念できます。全ての臨床工学技士がECMOを操作することができる訳ではなく、心臓の手術時に回す人工心肺の操作を担当する人で、人工心肺の知識・技術を学び実際に訓練を受けた技士のみが操作できます。
しかし人工心肺装置は、大学病院や一部の救急指定病院など数が限られているので、新型コロナウイルス感染が急速に拡大した場合などは、人手や器材が足らず医療崩壊につながる訳です。現在は少し落ち着いた感じのコロナ禍ですが、第2波、第3波に備えて、人工呼吸器やECMO増産、そしてそれらを取り扱える臨床工学技士の養成が必要になっています。
日本は諸外国に比べ、医師も看護師も臨床工学技士の数も少ない現状にあります。国は医療崩壊や医療経営危機を回避するためにも医療従事者の増員や、医療機器などの設備にもっと予算を回すべきだと考えます。
私たち、臨床工学技士は命のエンジニアとして、新型コロナウイルスだけでなく、患者さんの生命を救うべく今日も現場を走り回っています。そんな臨床工学技士に少しでも関心を持ってもらえればうれしい限りです。
(京都府臨床工学技士会副会長 藤井 耕)