ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

A型は収益性も問われ

2020.10.05

  • ふくしナウ

就労継続支援事業所

カフェを営むA型事業所で職員から指導を受けながら料理を盛り付ける利用者(2018年11月、京都市中京区)=提供写真

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
就労継続支援事業所は、障害者総合支援法に定められた障害のある人の就労を支援する福祉サービスの一つです。雇用型のA型と非雇用型のB型があり、一般企業などで働くことが難しい障害のある人に向けて職業訓練や生産活動を行います。利用者は、サービス利用にかかる費用の1割を負担します。所得に応じて負担の月額上限が設定されており、低所得者には軽減策が設けられています。残り9割は訓練等給付費として国や市町村から事業所に支給され、運営される仕組みです。

A型は、利用者が事業所と雇用契約を結んで働く訓練を行うことから、福祉と労働にまたがったサービスを提供する点に大きな特徴があります。労働者として働きながら、同時に訓練も受けて就職のための知識や能力を身につけていきます。

B型は、A型の仕事が難しい人、年齢や体力などから一般企業で働くことが困難な人らを対象にしています。作業訓練を通じて生産活動を行い、できたものに対して工賃が支払われます。

作業には、パソコン入力や農作業、調理、菓子製造、手工芸、クリーニング、車の部品加工などさまざまです。同じ就労継続支援事業所ですが、A型には原則最低賃金の支払いが義務付けられ、福祉サービスとはいえ仕事としての責任は重くなる傾向があります。B型は雇用契約がないので自分のペースで比較的自由な働き方ができる半面、工賃が低くなりやすく、各種保険が適用されないなどそれぞれ違いがあります。

A型は福祉的支援を行いながら最低賃金を払える事業活動を行うため、経営とのバランスをとるのが難しく全国の7割の事業所が赤字に苦しんでいます。支援のプロはいても営業活動や収益事業の運営では不得手であったり、職員の配置や育成にもその難しさがあります。

数年前、助成金の不正受給や利用者に適切な仕事を与えないなどの事例が明らかになりました。そのためA型の運営が厳格化され、実地指導で状況把握が強化などが行われました。収益性を高める努力が一層求められ、各地で経営破綻による事業所閉鎖や利用者の大量解雇も相次ぎました。制度の悪用ともいえるケースがあったことには残念な気持ちになります。

昨今、新型コロナウイルスの影響で、休業を余儀なくされたり仕事が激減するなど、障害のある人の就労を支える経営環境はさらに厳しくなっています。それでも事業所は努力を続けています。利用者の思いに寄り添い、就労支援を通じてより良い生活の実現のために尽力するという福祉マインドのもと、利用者の生産活動の質やあり方を見直し、商品やサービスが社会に受け入れられるものとなるように改善していくことが、いま重要だと思っています。