ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

奪われる子ども期の権利

2021.05.03

  • ふくしナウ

ヤングケアラー

2017年から始めた[ ケアラー事例検討会] で支援のあり方を議論する参加者ら(京都市中京区・中央青少年活動センター)=提供写真

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 乳母車を押しながらやってくる中学生、「いつもやってるし」と調理や洗い物の手際良い中学生、「勉強をしたいのに家では時間がとれない」と吐露する中高生、日本語が母語ではない親に代わり役所との窓口役を担い疲れていた高校生…。5年前、「ヤングケアラー」という言葉を得て、京都市の青少年活動センターで若者と出会う中でひっかかっていたことに納得がいった。

 この春、報道で「ヤングケアラー」という言葉を聞く機会が増えたのではないだろうか。数年前に社会的な課題として認知され始めたが、昨年度、国による初の全国調査が行われ、先般その結果が報告された。

 「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っていることにより、子ども自身がやりたいことができないなど、子ども自身の権利が守られていないと思われる子ども」と定義されたこの調査では、中学生は17人に1人(5・7%)、全日制の高校生は24人に1人(4・1%)がヤングケアラーであるという結果が出た。京都府内の生徒に換算すると、中学生は約3760人、高校生は約3220人もいる計算になる(高校生は全日制、定時制、通信制それぞれの割合で換算して合計した)。

 一体何が問題か。調査ではケアラーの1割が、7時間を超える介護を担っていることがわかった。本人の睡眠時間は? 勉強時間は? 多感な時期の新たなものごとへの出会い、友人と遊ぶ時間は? 「家族思いの良い子」として発見されにくいその実態には、子ども期の権利が奪われているという問題がある。また調査結果から「相談した経験がない」との回答が6割を超え、心の声を吐き出す場がないことも浮かび上がった。

 市内7カ所の青少年活動センターを運営する京都市ユースサービス協会は当事者からの声を受けて、2017年「ケアラー事例検討会」を設け、議論を始めた。当事者、研究者、養護教諭らのプロジェクトメンバーとともに、構造的課題や社会背景、どんな支援が必要かなどを探っている。また、当事者のつどいの定例開催、実態を伝えるための発信にも取り組んでいる。

 子ども期にとどまらずその後の人生にも影響を及ぼすこの問題を、20代までの若者を含めた「子ども・若者ケアラー」として位置づけている。関わる方々とともに社会的な理解を広げ、当事者一人一人が自分の人生の主人公になれるように支える、ユースサービスの視点にたって環境づくりを進めていきたい。

(京都市ユースサービス協会)