ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

社会で支える仕組みを

2021.12.06

  • ふくしナウ

医療的ケア児

人工呼吸器などをつけて野外イベントに参加する医療的ケア児(2019年5月、京都市上京区)=提供写真

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 近年、新生児医療技術の進歩とともに、人工呼吸器や酸素吸入、胃ろうや鼻からのチューブでの経管栄養など、医療ケアを必要としながら日常生活を送っている「医療的ケア児」とよばれる子どもたちが増えていて、全国で約2万人いるといわれています。これまで、生きていくために医療が必要な子どもたちは、「病院にしかいない」とされていましたが、近年子どもたちが長期入院を経て家族の待つ自宅へ帰り、地域で生活することが増えてきました。

 今年9月には、社会全体で医療的ケア児と家族を支えるための「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行されました。ただ、法律は施行されたものの、支援の在り方には解決すべき課題が多くあります。

 例えば、子どもたちが病院を退院し自宅に帰ると、家族が一緒に生活できる喜びがある一方で、それまで病院で医師や看護師が担っていた医療ケアを家族が行わなくてはなりません。訪問看護などのサービスも利用できますが、利用できる時間は限られているため、24時間ケアを家族が中心となって担っています。断続的な睡眠しか取れず、慢性的な疲労感を抱えている家族も多くいます。

 また、子どものケアのために離職や転職を余儀なくされる家族も多く、経済的な問題が発生する場合もあります。運よく保育園に入園できても、子どもの体調不良で入院が続いたり、定期的な受診やリハビリ、療育などで仕事を休まなくてはならないことも多いです。また、学齢期になると送迎や学校での付き添いをしなければならないなど新たな課題が生まれてきます。ケアを主として担うことが多い母親の病気や出産の際に誰がケアを行うのか、またきょうだい児の問題など、個々の子どもや家族によって必要な支援は違います。

 ここ数年、京都市では医療的ケア児のケアを担うことができる訪問看護ステーションや放課後デイサービス、保育園などが少しずつ増えてきました。私たちが運営する小規模保育園キコレもその一つです。お父さん、お母さんが安心して仕事を続けることができること、社会とつながっていること、必要な休息が取れること、そして子どもたちもしっかりと地域の中で生きていけることが大切だと感じます。社会全体で医療的ケア児とその家族を支える仕組みが整えられ、子どもたちと家族が安心して一日一日を過ごすことができるようになることを願っています。

NPO法人i – care kids京都代表理事 藤井蕗)