ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

聴く 語る 双方が楽しく

2020.07.06

  • 来た道 行く道

京都語り部の会代表/大西 まさ子さん

京都語り部の会で庶務全般を担当する田中典子さんと、スケジュールなどについて打ち合わせる大西まさ子さん(左)=6月24日、京都市下京区のひと・まち交流館京都

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 お年寄りから幼児まで、あらゆる年代の人たちに物語や昔話など多彩なジャンルでお話しするのが、私たち語り部です。

 読み聞かせや朗読とはまた違って、アクセントや方言などの制約なしに自分の語り口で、豊かなお話しの世界に誘うよう心がけています。聴く方も語る方も「共に楽しめること」が、ボランティア団体としての目標です。

 京都語り部の会は、禅定正世さん(84)が創始された、なにわ語り部の会(大阪市中央区)を母体に1986年、「お話の語り部講座」として発足しました。京都市上京区にあった京都社会福祉会館を拠点に有志約50人が参加。翌年に会の名称が変更され、私はその時に入会して、大阪から来られる禅定先生に初歩から学びました。

 福祉ボランティアに私がかかわったのは、中学生のころにテレビ番組で、孤児救済などに努めたスイスの教育思想家・ペスタロッチの事績を知ってからです。スイスの村が理想郷に見え憧れました。高校1年生から高槻市にある児童養護施設のボランティアに参加、3年生まで続けました。別の養護施設に就職して3年間働き、保育の勉強を続けた後、大阪市内で自殺防止センターの電話相談ボランティアを務めたこともあります。

 結婚して子どもが生まれると、親子で図書館へ通いました。そこでお話し会に出会い、語りの面白さに気付いたころ、京都語り部の会の会員募集を知ったのです。

 会の活動拠点は変遷を経て、現在は下京区の京都市市民活動総合センター(ひと・まち交流館京都内)に置いています。人前でお話しをするのが活動の中心ですが、新しい語り部(会員)を養成する取り組みも欠かせません。

 養成講座はベテラン会員が講師を務め、半年間に計6回開きます。過去500人以上が受講され、いま会のメンバーに定着した方は50代~80代の20人。これが現在の会員数です。

 外へ出向いて語る活動は、図書館とデイサービス施設が主で、図書館は小学生以下の子どもたちが対象。病院や地蔵盆会場でお話ししたこともあります。会員は本好きな人が多く図書館には、お話しのヒントを探すためにも、常に足を運びます。ただ、私たちは原稿を作りませんから、暗記力が勝負です。通常の長さ10分ほどのお話しを完成させるまでには、孤独な作業が続きます。

 「これを話したい。聴いてほしい」と望む会員は、年に3~4回開くミニお話し会で聴衆を前に披露できます。月に1回開く会員勉強会では、それぞれ腕試しを兼ねて語り、批評し合って技術向上に努めるようにしています。

 声をかけてくだされば、私たちはどこにでも語りに伺います。人にお話しをすると、自分の心も安らぐのがよく分かります。語り部は実に楽しい活動です。この楽しみに、一人でも多くの方が気付いて、仲間に加わっていただきたい。扉は常に開けて待っています。

おおにし・まさこ
1948年、大阪府生まれ。高校時代の3年間、児童養護施設でボランティア活動に従事。保育士資格を取り、静岡県で児童養護施設勤務も経験した。結婚で京都市へ移り、図書館のお話し会に魅かれ87年、京都語り部の会に参加。2007年から代表。会は12年、読書活動で文部科学省表彰を受けた。080(6168)3795