ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

自立支援の輪が広がれば

2022.08.01

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乙訓圏障がい者自立支援協議会事務局/ゼネラルマネージャー/夏川 久子さん

「障害のある人の自立や就労促進へ、地域の福祉資源をもっと掘り起こしたい」と語る夏川久子さん(7月21日、長岡京市井ノ内・乙訓圏域障がい者自立支援協議会事務局)

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 夫府立向日が丘支援学校(長岡京市)で、長く進路担当の教員を務め定年退職後、現職に就いて2年目になりました。障害がある人たちの生活や就労、医療的ケアなどの課題について、地域が持つ優れた人材や事業所、病院などの「福祉資源」を、どう見つけ出し活用させてもらうか。いま仕事の重点はそこに置いています。

 私のいる自立支援協議会は、向日市など2市1町でつくる「乙訓福祉施設事務組合」の所属です。地域の福祉事業所や支援学校、病院、企業など30を超す機関・団体から委員に加わってもらい、定期的に地域課題を話し合ってきました。その中で最近、取り上げているのが入浴の問題です。

 障害の重い大人は、子どもと違い週2~3回しか入浴できない人が多いというのです。早速、地域で機械浴設備を持つ施設にアンケートを行い、11カ所から「できることがあれば協力する」との回答をいただきました。

 たんの吸引など医療的ケアが必要な人のショートステイ先が少ない問題では、協議の中で「介護老人保健施設(老健)はどう?」とのアイデアが出て、長岡京市内の老健事業者さんが、新たに引き受けてくださることになりました。地域のご理解は何よりありがたいです。

 府内の小学校教員だった私は1997年に向日が丘養護学校高等部(当時)へ異動し、医療的ケアが要る生徒を担任しました。給食中のたん吸引など初めての仕事に戸惑いましたが、生徒のお母さん方に大事にしていただき、多くを教わりながら楽しく仕事ができました。

 お母さん方は、卒業後の生徒の居場所や協力者の確保など「何もないところから作り上げる」行動力にあふれていました。交流は今も続き、私に社会を見る目を開いてくださった「生涯の恩人たち」と感謝しています。

 担任だけの勤務から、次は進路部の担当を兼任しました。進路部は卒業生の就労先を探す仕事もあって、福祉事業所や企業の訪問、職場実習の依頼、付き添いなどが欠かせません。兼任はハードな仕事で、52歳のころついに倒れてしまいました。手術を受け快癒して学校に復帰した2年後からは進路部専任に変わったのです。

 私に自立支援協議会から依頼が届いたのは定年の数年前でした。協議会に就労支援部会を置くので「部会長に」という内容。教員身分で前例もなかったのですが、引き受けることにしました。

 そのころ、障害者就労支援の地域ネットワークが各地に誕生していました。乙訓地域は未整備だったので、部会でも実現準備を進め、京都中小企業家同友会をはじめ地元企業経営者のみなさんら多くの協力を得て三年前、発足にこぎつけました。それが乙訓障がい者就労支援ネットワーク「たけのこ」です。

 「たけのこ」を介して実際に就労を果たす若者も出てきました。この良い循環が定着して自立支援の輪が一層広がるよう、私も残りの力を尽くすつもりです。

なつかわ・ひさこ
1960年、兵庫県生まれ。85年、京都府教員となり宇治小などを経て、97年から府立向日が丘養護学校高等部勤務。進路部担当を長く務めた。在校中に乙訓福祉施設事務組合・障がい者自立支援協議会の就労支援部会長に就き2019年、就労支援ネットワーク「たけのこ」の創立にも参画した。京都市右京区在住。