ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

つらさや痛み 笑い飛ばす

2022.09.05

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ラフター(笑い)ヨガ「らふさぽーと」代表/澤田 和子さん

「みんなで笑って健康になりたいという人があれば、どこにでも行きます」と話す澤田和子さん(7月28日、長岡京市天神4丁目・市中央公民館)

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 「笑いヨガ」はユーモアやジョーク抜き、つまり理由なしでも笑えるよう考えられた健康づくりと心身リフレッシュの手法です。

 インドの医師、マダン・カタリア博士が考案して1995年に実践を始めました。今日では世界中に広がり、「ラフターヨガインターナショナル日本支部」も開設されています。

 人は思い詰めて感情を閉じ込めるとストレスになり、病気につながります。閉じ込めたものを外へ出す。そのために笑うのです。ヨガと名が付いていますが、ヨガの呼吸法で笑うだけで、ポーズを取ったりはしません。

 私たち「らふさぽーと」は2011年、京都や大阪の笑いヨガ仲間11人が集まって結成。メンバーによる自主活動のほか、高齢者施設や自治会などを訪問して笑いを広げています。

 通常の実践では、笑う音は「ハハハ」が基本です。まず「吐く息で笑う呼吸法」を意識して、隣の人と目を見合ってあいさつで笑い、握手やハグをします。軽い運動をしながら笑い、最後はリラクセーションで心身を開放します。つらさ、痛みも笑い飛ばせるように訓練を重ねます。

 私は専業主婦で子ども3人を育てたのですが、心からは笑えない性質でした。毎日顔を合わせる隣家の奥さんがよく笑う方で、その笑いに癒やされていました。ある時、奥さんが入院され、笑いに飢えていた時、新聞広告で笑いヨガの講座を見つけたのです。
 京都市内まで通い、指導者養成講座に進み講師の資格も取得。初めておなかから笑えるようになりマイナス志向から脱却。仲間ができて、「らふさぽーと」結成につながりました。

 コロナ禍前までは、メンバーが手分けしてボランティアで通所介護施設「百々福」(京都市北区)、知的障害のある人の施設「乙訓楽苑」(長岡京市)など5カ所を定期訪問。不定期に招かれる自治会や老人会などを含めると年間延べ約3500人に笑いを届けました。初めは理由なしで笑うのが難しくても、続けていると本当に笑えてくるのが笑いヨガです。

 高齢者福祉施設の訪問ではこんなことがありました。「水戸黄門」をテーマに、代官が悪徳商人に言うせりふ「おまえも悪よのう、ヒヒヒヒヒ」。みんなでこれを繰り返したところ、いつもむっつり、にこりともしないおじいさんがおなかの底からけたたましい笑い声を発したのです。施設職員もあぜんの大声でした。男性の中には歳をとっても少年の心を持つ人があり、何か心に響くと少年に帰ります。これも笑いヨガの力です。

 訪ねる先々で「こんなに笑ったのは久しぶり」の声を聞き、笑顔を見ます。今回のコロナ禍で活動は大きく制約されましたが、笑いたい人があれば、私たちはどこへでも行きます。笑いヨガの輪を広げるため来年は、長岡京市で啓発の自主講演会を開く予定で準備を進めているところです。

さわだ・かずこ
1952年、兵庫県姫路市生まれ。24歳で結婚後、染色の仕事などを経て、58歳の時に「笑いヨガ」の講座を受講。ラフターヨガ認定講師の資格を取得した。他の講師らと2011年、ボランティアグループ「らふさぽーと」を結成。障害者施設や高齢者施設などで笑いヨガの実践・指導に当たっている。長岡京市在住。