ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

障害者自立と理解 推進へ

2024.05.06

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70周年を迎えた「京都手をつなぐ育成会」/会長  上田 克枝 さん

「障害に対する一般の理解を、さらに広げたい」と話す上田克枝会長(京都市右京区の京都手をつなぐ育成会事務局)

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

京都手をつなぐ育成会は、ことし結成70周年を迎えました。知的障害や発達障害のある人たちの福祉向上と自立・社会参加を進める親たちの会としては、京都で最も長い実績を積んだ団体です。

地域のご協力、行政からの援助もいただき現在、就労継続支援B型事業所5カ所、生活介護事業所2カ所、グループホーム1カ所のほか、相談支援事業所など多様な事業を展開しています。私は、長女が小学校の育成学級に入った1992年から育成会とともに歩んできました。

ことし38歳になった長女は、育成会設立のグループホーム「新明ハウス」に住み、他法人運営のB型事業所に通っています。京都市教委から委託された知的発達障害者の社会学習活動「青年学級」に、高1から参加したことで自主性が大きく向上。新明ハウスにいても「せきや鼻水が出てきた」など、体の症状を自分で外へメール送信できるようになりました。

青年学級は、養護学校に高等部がなかった63年、中卒生向けに設けた休日の学習提供の場が前身です。教員OBの方々がボランティアで講師を務めてくださり、83年から主会場を京都市知的障害者学習ホーム「ひかり学園」(左京区)に定めました。

近年は美術、工作、運動などのクラブ活動や宿泊学習なども設け、障害の重い人でも楽しめる居場所に定着。月2回の活動ですが、交流を求め20代から70代までの約百人が登録済みです。受講生の多くが、自立への能力と意欲を向上させ、講師の先生方には感謝しかありません。

就労支援や自己研さん事業の一方で、私たちが重視しているのは、広く一般に「障害を知ってもらう」ことです。2019年には啓発キャラバン「みやこ・まいこ隊」を結成。会員ら約10人が10分程度の寸劇を通じ「ぼくたちは、なぜ独り言をよく言うのか」「バスの一番前の席になぜこだわるか」など、障害のある人の心理を分かりやすく紹介します。

小中学校での出張実演に加え、職員研修として企業から招請されることも増えました。啓発の輪を広げるため今後は、会員以外の方もメンバーに参加していただけたらと思います。

4年前からのコロナ禍で、育成会の事業や行事は大きな制約を強いられました。半面で、育成会全国組織などとはリモート会議が定着。組織のIT化を進める機会となり、悪い影響ばかりではありませんでした。

私の過去三十数年を振り返ると、多くの人に出会え、多くのことを学べて、それが生涯の宝物になりました。障害のない子を育てていたら、これだけの人脈はできなかったと、感じます。

育成会はいま、会員(460人)の減少や、各事業所の人材確保難などの課題に直面しています。持続可能な育成会活動へ何が必要なのか。人脈を生かし、会員のニーズを引き出しながら解決策を探っていくつもりです。

うえだ・かつえ

1954年、京都市生まれ。同志社女子大英文学科卒。92年、京都精神薄弱者育成会(現・京都手をつなぐ育成会)に入会。理事、副会長などを経て2022年から会長。京都市社会福祉審議会委員。京都府障害者施策推進協議会委員。西京区在住。