2024.08.05
2024.08.05
「シニアあんしん倶楽部」/理事長 稲垣 忠 さん
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
超高齢化社会のいま、終活という言葉がすっかり定着しました。私たち「シニアあんしん倶楽部(くらぶ)」は、終活を「修活」と言い換え、死に支度ではなく、老い支度の学習・実践に重点を置き、大津市の市民活動センターを拠点に活動しています。
「修活」とは、人生の最終章を幸せに悔いなく修めるための準備です。元気なうちに福祉や医療・介護制度などの知識を磨き、自立自助の態勢を整えて、最晩年に起こりうるリスクを最小限に止めることを目ざすのです。
倶楽部では会員勉強会のほか、だれでも参加できる「人生の身仕舞い支度講座」(第4金曜日、参加料800円)を開講。介護離職のない親子関係づくりなど、具体的な提案を続けてきました。
京都の大手企業社員としてマーケティングなどを担当した私は、思うところあって56歳で早期退職。前職の経験を買われ所属したシニア関連の二つの団体で、福祉制度を基礎から学ぶうち、高齢者支援の必要性を強く感じました。2012年、2団体の同僚や有志に呼びかけ結成したのが「シニアあんしん倶楽部」です。
同じころ、社員時代の先輩が始めた会員制の葬祭相談事業を手伝い、法外な葬祭料や本人の遺志に反した葬儀などが世間に横行していることを知ったのも、倶楽部結成の動機になりました。
会員は現在、40代から80代までの24人。毎週金曜日に意見交換会や修活のための勉強会を開きます。「週1回は出かける先がある」ことも、在宅高齢者にとっては重要なのです。会員同士でバス旅行や、ウクレレのグループを編成して慰問演奏に出かけることもあります。
「人生の身仕舞い支度講座」は、私が専任講師となり、「かかりつけ医を持つ」「成年後見制度を知る」「遺言書を準備する」など15カ条の身仕舞い支度を解説します。テキストとして倶楽部作成の「私と家族のあんしん手帳」(65)を配布。会場の市民活動センター以外に、自治会などの依頼による出前講座も年に数回開いています。
講座スタートから12年たち、分かってきたのは介護保険に限らず、多様な公的支援制度について知らない人が多い実態でした。必要な情報をくまなく紹介する私たちの活動は、ますます求められていると感じます。
身仕舞い支度15カ条の中には、「健康寿命を延ばす」も入っていますが、私はその先の「自立寿命」と「貢献寿命」の二つを提唱したいのです。自立寿命は1人でトイレに行けるなど人の世話にならず自力で物事をこなせる限界。貢献寿命は、何か人の役に立とうとする気力の限界。二つの限界に挑むことこそ究極の修活です。
活動を通じ、私たちは高齢者支援の知識や情報を数多く積み上げました。次の世代にそれをどう継承するか。私自身、今後のライフワークにするつもりです。
いながき・ただし
1946年、三重県生まれ。大学卒業後、京都市の大手繊維会社に入社。海外勤務などを経て退職。2012年、高齢者福祉制度などの周知が進んでいない実態を見て、大津市でシニアあんしん倶楽部を結成。高齢者支援の活動を始める。同市内の自宅が倶楽部事務局090(1904)8883。