ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

できる時にできることを

2024.09.02

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「京都ボランティア学習実践研究会」/代表 名賀 亨 さん

美山ワークキャンプで、知井振興会の長野建一会長と談笑する名賀亨代表(右)=2023年8月、南丹市美山町 提供写真

学生時代からボランティアの魅力と奥深さに魅かれ、実践と研究に取り組んでいます。南丹市美山町の知井地区で続ける「美山ワークキャンプ」もその一つ。大学生ら若者に実践と学びを提供できるプログラムを組み、17年目に入りました。

深刻な高齢化と過疎に抗して、活性化に情熱を注ぐ地元の人々と手を取り合い、夏は側溝の泥上げ、冬は雪かきなどの労力を提供します。自然豊かな環境で汗を流す学生たちは、住民のみなさんとの交流や、仲間と本音をぶつけ合うディスカッションなどを通じ毎回、ひと周り大きく成長していきます。

「非日常の体験で新しい自分を見つけた」。多くの学生が、そんな感想を漏らします。今夏で通算39回目となるワークキャンプは、秋に順延する予定です。

交通事故で父を亡くした私は学生時代に「大阪交通遺児を励ます会」に加わり、初めてキャンプ引率などの活動に出合いました。建設会社に就職した13年間も活動は絶やさず、1988年には勧められ、社会福祉法人「大阪ボランティア協会」に転職。ここで高校生などの若者ボランティアを育成するプログラムを担当したのです。

協会の方針は、単なる人助けではなく「できる時にできることを通じ社会に関わる」が基本。高校生たちは障害者施設で生活援助に当たるのですが、最初は利用者さんとの接し方に戸惑います。一歩踏み出し意思疎通できると自信が芽生え、幼い高校生が見違えるようにたくましく変身します。ボランティア活動の力にあらためて感動させられる体験でした。

2006年に華頂短大の教員に転じてからは、京都で若者ボランティアを育てたいと一念発起。仲間たちと「京都ボランティア学習実践研究会」を設立したのです。ここで南丹市社協の知人を通じ知り合ったのが美山町・知井振興会の河野賢司事務局長でした。

集落11のうち三つが限界集落という状況で、外部の力も借りて集落活性化を図りたい河野さんと私たちの思惑が一致。第1回(08年9月)から、学生たちの活動ぶりは高く評価され、「次はいつ来る」と言ってもらえる関係が出来上がったのです。

美山ワークキャンプは夏冬の2回あり、廃校の旧知井小を宿泊所に約1週間の日程で20~30人が自炊しながら活動します。OB、社会人も参加して、草刈りや獣除けの網張り作業などに従事。私も欠かさず作業に加わります。

ボランティア活動はする側、受ける側、みんなの問題です。みんなが関わって「できる時にできることからやる」が、責任ある社会人の態度だと思います。

今後は、美山ワークキャンプ以外のプログラムも企画中です。当面、大量の私物のレコードを生かし、被災地などで、みんなで曲を聴く「レコードサロン」の可能性も模索しているところです。

なが・とおる

1954年、大阪市生まれ。神戸大大学院修了。学生時代にボランティア活動に目覚め、会社員を経て88年、大阪ボランティア協会職員、阪神大震災でも活動。2007年、京都ボランティア学習実践研究会を設立。華頂短大で准教授、学生部長、事務局長、華頂幼稚園副園長などを務め24年退職。枚方市在住。