ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

コロナ禍克服願う/市民の善意を459人に

2020.07.27

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京都新聞愛の奨学金(2020/07/27)

贈呈式で奨学金を受け取る学生・生徒(11日、京都市中京区・京都新聞文化ホール)

京都新聞社会福祉事業団の2020年度「京都新聞愛の奨学金」贈呈式がこのほど、京都市中京区の京都新聞社で行われた。経済的事情など厳しい条件にもめげず、将来への目標と希望を抱いて学ぶ学生・生徒を支援する趣旨で続いている。56回目の今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響下、「コロナ禍」克服の一助へと熱い思いの選考と贈呈だった。

大藪俊志委員長(佛教大社会学部准教授)ら4人の選考委員会で選ばれた京都府、滋賀県内の学生・生徒計459人に総額4110万円が贈られた。公募する一般の部で前年度の倍近い280人に贈られ、全体でも人数、総額ともに過去を大幅に上回る最大規模となった。一般の部の申請者数が前年度比1・5倍ほどに増加。280人の半数以上でコロナ禍が申請理由に挙がっていた。

同奨学金は京都新聞紙上の「誕生日おめでとう」コーナーへの寄付や協賛寄付金、一般寄付も加えて支給。本年度募集では「新型コロナウイルスで困っている学生さんのために」と京都市内の匿名女性から1000万円、城陽市の匿名女性から30万円、コロナ禍救援として京都市下京区のマンション事業会社からも500万円などの善意があり、同事業団では「1人でも多くの申請者に支給を」と全額1530万円を上積みした。

選考委員会が、一般の部で高校生189人、大学生・専門学校生91人を選んだ。他に交通遺児の部で高校生3人、大学生8人の全員、公立高が推薦した「定時制・通信制の部」に16人、奨学激励金を贈る児童養護施設の高校生152人も。

贈呈式は感染予防で5回に分散開催し、藤木泰嘉常務理事が代表の学生・生徒に奨学金を手渡した。藤木常務理事は奨学金の趣旨や選考の経過、今年は特に「コロナ禍」を案じる善意が重なったことなどを説明。「人は助けられる時も助ける時もある。素直な気持ちで助け合える社会こそが大切。困っている人を見たら手を差し伸べられる人に」と奨学生を激励した。

選ばれた学生・生徒には、ひとり親家庭や、小中学校での不登校、高校の中退などを経験した後、勉学の必要性を感じて通信制で学ぶ高校生なども。さまざまな個別事情を考慮しながら選考された。

式に出た滋賀県内の男子高校生は「退学経験もあるけど、いまは料理の専門学校目指して勉強中。バイトしている持ち帰り弁当店の客もコロナ禍で減り、収入的には影響を受けている。将来は料理でいろんな人を喜ばせたい」と夢を語った。

京都市内の私立大学付属高で学ぶ男子生徒は「小中学校で不登校だった。今は芸術関係の大学目指し幅広く学んでます。京都の魅力を若者向けにアピールする仕事がしたい」と意欲的。京都市内の私立大学に在籍するベトナム留学生も選考された。帰国して再来日できず、贈呈式は欠席したが、大学のオンライン講義に元気に参加できており、留学生活が早く戻ることを期待しているという。

愛の奨学金は返済不要の給付型。高校生は年額9万円、大学生・専門学校生は同18万円、児童養護施設高校生の奨学激励金は同3万円。

チャレンジ情熱に感銘

大藪俊志選考委員長の話
成績に加え作文から将来に向けた思いや現在の学業などに対する意欲をくみました。過去の挫折や厳しい生活環境の中でも、チャレンジの情熱で精いっぱい励まれている様子に感銘を受けました。新型コロナウイルスの感染拡大が直接、間接に影を落とす中、これを機会に多くを学んで職業選択に生かそうとか、自宅学習が自分に向き合うきっかけになったなど、前向きな人が多かったのも印象的。奨学金の趣旨・目的を受け止め、目標や夢の実現に向け、有意義に活用してくださることを願っています。