2024.01.15
2024.01.15
ともに生きるフォーラム
京都新聞社会福祉事業団は昨年末に京都市中京区の京都新聞文化ホールで、命を尊び共に助け合って生きる社会のあり方を考える「ともに生きるフォーラム」を開いた。同紙朝刊「福祉のページ」のコラム「暖流」を今春から執筆する予定の平等院(宇治市)住職・神居文彰さんら2人がそれぞれの分野から人生の心構えなどについて話し、市民約百人が熱心に耳を傾けた。
三井住友信託銀行京都支店財務コンサルタントの土谷紀久さんは「自分の生きた証を社会貢献に~遺贈による寄付のメリット・留意点と具体例~」と題して講演。土谷さんは、生前の寄付や遺贈(遺言による寄付)、相続財産の寄付の特徴や違いを説明したうえで、遺贈のメリットについて「自分の生活資金を気にすることなく、残った余剰財産から寄付出来る。自らの思いを遺言書にかくことも可能」などとした。
また「遺言は元気なうちに作成しましょう」とアドバイス。NPO法人に遺贈された財産は相続税の課税対象外になることや、不動産を遺贈する場合には譲渡所得として所得税が課税されるケースもあることなど、税制面での注意点も具体的に分かりやすく説明した。遺贈について「高額である必要はない。思いを実現することが大切だ」と話し、遺言については「その人を信じて、その人に託す」ことが重要だと締めくくった。
神居さんは「命の尊さ・共生を考える」との題で講演。平等院の風景や文化財、仏像などを多数のスライド写真で紹介しながら多様なイメージを提示。「命は有限である」と前置きして「今この時間を大切に」と直言。「生まれた時から人は一人ではない」とし、「人と人との結びつきの追認体験も必要だ」「どのような結びつきを持つかということは、縁ということ」と仏教的な知恵も披露した。
「個では生きられないのだから、自己以外の存在の尊重が必要」とも述べ、宗教者としての立場から「キリスト教は啓示の宗教と言われるが、対比するなら仏教は気づきの宗教」と指摘。平等院や寺の借景を例に「自己の所有を越えたものを美しいと感じる心の暗喩だ」とも話し、「人はできないことばかり、間違うことばかりだが、そういった人間とともに生きていくことが大切」と説いた。
「老いは『生(お)ふ』であり、人としての成熟だという考えもある」「成熟とは温かみを持った時で、人は大人になる」。また「人と人との垣根を取りはらった時に成熟したともいえる」とも述懐した。
宇治市の生活介護事業所「宇治作業所のびのび」(社会福祉法人宇治東福祉会運営)が同事業団の助成金で購入した業務用ミキサーを活用して商品化したユニークな焼き菓子「おからスコーン」と黒糖クッキーが、参加者に土産として配られた。