ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

相互理解と環境、自信 この3点があれば/機器導入で雇用可能、地域性や特性生かし継続へ

2024.03.11

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シンポジウム「障害のある人の就労支援」

シンポジウムでは障害者雇用をめぐり活発に意見交換された(2月18日、京都市中京区)

京都新聞社会福祉事業団は、シンポジウム「障害のある人の就労支援」を京都市中京区の京都新聞文化ホールで先月に開いた。障害者雇用を実践する地元企業の経営者や山下晃正・京都府副知事がパネル討論し、参加した関係者ら約80人のグループ討議もあり、就労を進める環境整備や現状での課題などについて認識を深めた。

最初に白石真古人・同事業団常務理事が「障害者雇用への理解を広め、だれもが自分の能力を発揮でき、地域の中でいきいきと働きながら普通に暮らしていける『共生社会』を目指そう」とあいさつした。パネル討論には山下副知事と、本年度に府から「障害者雇用貢献団体表彰」を受けた団体の会員企業から聖護院八ッ橋総本店専務の鈴鹿可奈子さんと山田木工所経営の山田正志さんが登壇、取り組みの紹介や提言もなされた。

鈴鹿さんは「障害者がいることで、会社の中に『輪』ができ、接し方も理解できていく。こうしたことが社会全体に広がればいいと、障害者雇用を長く続けている。発達障害などの場合、特にコミュニケーションの大切さを感じている。ある精神障害の人の場合、働く中で、少しずつ周囲とも話せるようになってきた。変わるきっかけ作りも大切だ」と語った。

山田さんは「家具や建具の注文生産会社で、雇用後に、安全面もあり障害者の就労は無理と思った時期もあったが、ボタン操作できる3次元加工機を導入して可能になった。作った製品をほめられてやる気を出してくれた発達障害の人のケースもあった」と報告した。

山下副知事は「京都府内の障害者雇用率は、法定雇用率を上回り、評価されている。職種別にはまだ差があるが、ものづくり系企業の身体障害者雇用は進んでいる。大手企業は雇用人数も多い中、よくやってもらっている」と府内の状況を話した。またコーディネーターの石井雄一郎さん(障害者雇用を続ける企業経営者)と交互に、障害者の法定雇用率の上昇など制度整備が進んできたが、「働ける障害者の取り合い」的な状況が生まれたり、大企業に比べ中小では雇用が難しいなどの課題や、「大学生の就職段階で発達障害が分かることも多く、対応が難しい問題だ」などとも指摘した。

伝統産業の多い京都の地域性や各々(おのおの)の企業の特性を生かした継続した就労・定着への支援や連携などについても話し、多様性のある社会や雇用の在り方に関しても、それぞれの立場から言及、障害者雇用の有用性を強調した。

グループ討議後の発表では「障害者の就労には、雇用者や同僚との相互の理解、就労環境を整える、働く自信を持ってもらう、の3点が大切」「働き方は人それぞれ。多様でいい」「企業側では、『法定雇用率を満たすために障害者を雇用したが、結果的には雇用してよかった』という声が7、8割になる」など就労への思いや願いを語るさまざまな意見が報告された。