2024.07.15
2024.07.15
「スムージーハウスパッソ」/社会福祉士 高垣 聡太(たかがき そうた) さん(24)
障害、高齢、児童などの福祉施設で働く若手職員や、大学生など若手が中心となり活動する団体などのリーダーを取り上げる新企画「若葉」を始めます。福祉現場の魅力を伝え、働く人たちを応援します。
京都市北区の地下鉄北大路駅から徒歩10分の場所にある、NPO法人プエルタが運営する就労継続支援B型事業所パッソ。「スムージーハウスパッソ」では、障害のある人たちが体に優しいスムージーを作っている。法人に入職して2年目の社会福祉士高垣聡太さん(24)は、今年4月からパッソの利用者を支える。「メンバーさんたちと話すと、自分にはない発想が聞けたり、それぞれのこだわりを知れたりして、とても面白い。福祉の仕事は幅が広く、『大変』という世間的なイメージとは違う部分があると実感しています」
福祉職を目指したきっかけは、ニュースでスクールソーシャルワーカーの仕事を知ったことだった。小中学校時代の友人が不登校や保健室登校を経験していた。学校に行きにくい子を支援する仕事を知り、関心をもった。
「生まれ育ったのが田舎だったこともあり、もっていた福祉のイメージは『介護』。けれど、若者を支える仕事があると知って心惹(ひ)かれるようになりました」。福祉の仕事に決めきれない気持ちもあったが、大学のオープンキャンパスで「卒業後は福祉以外の職に就く人もいる」と聞き、まずは福祉を学んでみようと決めた。
当初は障害分野を志していなかったが、授業でB型事業所に通う人と支援者の話を聞き、興味がわいた。「ステップアップの経験談が素敵(すてき)で、障害のある人と接したくなった」といい、放課後等デイサービスでアルバイトを始めた。実習先には、若い障害者がたくさん学んでいるプエルタを選んだ。「プエルタは自主企画のイベントも多くて活気があり、『プエルタが大好き』という気持ちがあふれている場所だった。みんなの思いを実現するサポートの仕事を、ここでやりたいと思いました」。入職1年目は、自立訓練事業に取り組むプエルタでスタッフとして働いた。調理実習や金銭管理、芸術、音楽などさまざまな学びの時間があり、利用者の成長をサポートしてきた。
現在の職場は、プエルタ卒業生たちが通う事業所だ。一定の生活スキルを身につけた人たちが、スムージーの販売を中心に、農作業や自主製品の出張販売などに取り組む。利用者のアイデアが商品化されることもあり、今月はバナナとブルーベリーのスムージーを限定発売中だ。サポート役の高垣さんは、「一人一人がどうすれば作業をやりやすく、楽しんでもらえるか」と考え工夫する。「作った商品が売れたり、お客さんが来てくれたりしたときに、とても嬉(うれ)しそうに報告される。笑顔を見ることが、仕事のモチベーションになっていますね」
利用者の立場で考えられる支援者を目指す。「友達」ではないけれど距離の近い存在だ。専門職として、言葉がけやサポートの力をつけ、安心して話してもらえるようになりたいと考える。「もともと人の話を聴くのが好きなので、傾聴の姿勢は大事にしたい。場を盛り上げて楽しい時間をつくれる支援者にもなっていきたい」(フリーライター・小坂綾子)
パッソ
NPO法人プエルタが運営する就労継続支援B型事業所。2015年に開設。自立訓練事業で豊かな学びを経験した20~30代の障害のある人たちが利用する。「スムージーハウスパッソ」を運営するほか、農作業や自主製品の制作、販売も手がけ、プエルタと合同で芸術・音楽活動などにも取り組む。075(748)0007。