ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

地域との共生目指し/障害ある子らの余暇支援(21/05/24)

2021.05.24

  • わたしの現場

小出 (こいで)拓(たく) さん

子どもたちと一緒に放課後の時間を過ごす小出拓さん(左)=城陽市観音堂・ちゃれんじ

 学校が終わる時間になると、城陽市観音堂の障害者支援事業所に、サービスを利用する子どもたちがやってくる。行動援護や移動支援、重度訪問介護などの事業を展開するNPO法人「ちゃれんじ」の拠点だ。畑や砂場がある事業所の広々とした敷地には、柵も門もない。開かれた空間で、職員と宿題をしたり、ウサギと遊んだり、散歩に出かけたり。子どもたちは、思い思いに過ごす。

 地域とのつながりを大切に、地域社会の中で当たり前の生活を―。法人のモットーには、理事長である小出拓さん(40)の思いが詰まっている。「障害のある人もない人も地域の中で一緒に生きる時代になってきて、共生社会がうたわれている。けれど、そうは言ってもまだまだ『利用者対職員』の関係しかないのが現状。職員以外の人と関わっていく力や地域の人に声をかける力、友達と協力する力を育てていきたい」

 同法人は2010年の設立で、小出さんが理事長に就任したのは7年前のことだ。別の事業所に勤めているときに前理事長が体調を崩し、あとを引き継ぐことになった。法人のスタッフは9人、利用者は56人で、そのうち半数以上が小学生から高校生。午前中は主にスタッフが居宅介護などに出かけ、放課後には、子どもたちの居場所として一緒に過ごしている。

 見学に来た家族が驚くのは、鍵をかけず、門も柵もない事業所であることだ。ただ、これも、地域と利用者を決して遮断しないための工夫。「強度行動障害のある子のご家族は、『うちの子は走って逃げていってしまう』とおっしゃるけれど、実はそういうケースはまれ。ハードの問題ではなく、大事なのは人との関係」。安心安全で楽しい場であれば逃げる必要がない、というのが持論だ。

 住民と関わる機会が自然に生まれ、自治会の人が野菜を作りに来てくれるようになった。住民と一緒にうどん作りやシイタケ栽培に挑戦し、地域の人がそばにいることが当たり前になりつつある。「子どもたちには、ちゃれんじで世界を広げてもらい、ちゃれんじでの経験によって、高校卒業後の将来の選択肢を広げてもらいたい」

 父親が支援学校の校長、母親が支援学級の教員で、障害のある子と身近に接してきた小出さん。大学卒業後は高齢者福祉の現場で10年勤めたが、燃え尽きて退職した。原点に返って障害者支援の道に進み、働きすぎた経験から、職員が自然体でいられる環境づくりを心がける。「利用者と良い関係を築いてもらう鍵は、職場環境。利用者の主体性を大切にした上で、自分の色を生かし、自分らしく楽しんで働いてもらっています」

 生まれ育った城陽への愛情も強く、青年会議所に所属して地域活動も続けてきた。福祉にとどまらない視点で、障害のある人と生きる地域社会の未来を見据える。大勢の人が集まるお祭り会場に障害者の休憩所を作る活動なども始め、応援の輪が広がっている。「障害があってもなくても、『地域で暮らす人』なんですよ。ちゃれんじは、あくまでも生きる場所の一つで、彼らが生きていくのは地域。懸け橋になる、ということも、私たちの大事な仕事だと思っています」