ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

「女性の声届ける」活動も/同じ立場で自立支援(21/09/14)

2021.09.14

  • わたしの現場

香田 晴子(こうだ・はるこ)さん

JCILの事務所でスタッフたちと談笑する香田晴子さん(左)=京都市南区

 障害のある人が地域で主体的に暮らせる社会を目指して活動する、京都市南区の「日本自立生活センター」(JCIL)。今年4月に代表に就任した香田晴子さん(59)は、脳性まひで運動障害と言語障害があり、ピア(仲間)サポーターとして、生活相談や支援活動に取り組んでいる。「同じ立場だから伝えられる生活感や現実感がある」と語り、共に考え、同じ目線でアドバイスする姿勢は、自立を目指す障害者らを支えている。

 JCILの設立は1984年。障害者が「何もできない人」として守られるのではなく、健常者と対等に生きられるように―という基本理念を掲げて活動。当事者スタッフは13人で、相談業務や行政機関などへの同行支援、送迎サービスの提供やキャンプ、外出企画などを行っている。また、JCILが母体となる介助者派遣のNPO法人「自立支援事業所」とNPO法人「ワークス共同作業所」も併設する。

 香田さんとJCILの出合いは91年。養護学校を卒業して共同作業所で働く中、学校の先輩から紹介された。「作業所では子ども扱いされていると感じていました。JCILのサポートを受け、あきらめかけていた自立生活を始めることができ、経験を生かして障害のある人の力になりたいと思いました」

 スタッフになって最初の10年は旅行企画を担当し、電動車いすの参加者や介助者を率い、国内外の各地を毎年旅した。大変だったのは、旅行会社との連携。障害者のニーズから外れた対応があれば指摘し、理解が得られるまで粘り強く伝えた。車いすの人のトイレに苦労したり、発熱者が出たり、予想外の出来事は数知れず。「一つ一つ解決し、やればできると自信をもてました」

 近年は、中心的な仕事を若いスタッフに任せ、行政や外部機関とのやりとりや学校での講演など発信にも力を入れる。今年2月に他界した前代表の矢吹文敏さんの思いを継ぎ、若手と共に今後の方向性を探っている。

 現在、団体の活動と並行して取り組んでいるのが、「女性の声を届ける」試みだ。2015年施行の「京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり条例」制定の際には、障害のある女性が困難な状況に置かれる場合の適切な配慮を重視する一文を入れるよう提言し、採用された。「障害者運動の世界は男性中心で、女性の声が届きにくい」と感じていた中で、声をあげる大切さを実感した。

 また、障害の有無を超えて女性の悩みを理解しあえる体制を模索。性暴力被害者支援の養成講座を受講し、障害の有無に関わらない女性の茶話会も定期開催する。「障害は私の一部分」というのが持論でもあり、同じ社会を生きる人としての関係づくりを重視する。

 香田さんが自立生活を始めた頃から、ハード面の環境は大きく変わった。一方、「人の気持ちは変わらず、優生思想は健在だ」とも感じる。「障害や病気があっても当たり前に生きられる社会への近道は、まちにいろいろな人がいて生活している現実を見てもらうこと。そのために私たちの活動があるし、私たちはどこへでも行くのです」

(フリーライター・小坂綾子)