ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

ふれあいで安心できる場に/視覚障害者の情報提供を担う(22/09/26)

2022.09.26

  • わたしの現場

山本 たろ(やまもと・たろ)さん

点字本を製作する職員に声をかける山本たろさん(右)=13日、京都市北区

 京都市北区にある京都ライトハウスは、「盲学生のための図書館を」という願いで1961年に創立され、点字図書などを備えて光を放つ「海なき灯台」とされた。今では視覚障害者に対する情報・福祉事業を中心に、幅広い障害者サポートを行う総合福祉施設となっている。運営する社会福祉法人理事の山本たろさん(63)は、大学卒業以来40年、同施設で点字出版など情報部門勤務も長く、現在は「生活介護事業所らくらく」所長を務めるなど、事業の発展と歩みをともにしてきた。

 情報部門では、京都府の「府民だより」や府社会福祉協議会の「京都の福祉」など定期刊行物の点字版・音声版製作をはじめ、世界史辞典や各種医学関係の点訳本、昨年200号を数えたオリジナルの点字雑誌「旅」など多彩な出版物を製作し、その品質の高さには定評がある。

 現在の点字製作作業は、パソコンで編集して塩化ビニールの原版を自動製版するなど3、40年前から順次、自動化や機械化が進む。一方で、厚みのある紙に点字を打ち出すプレスや上製本作業には、独特の技術と製作者の熟練が依然として必要とされる。

 山本さんは「ボランティアさんの協力も得て点訳・音訳などの関係に長年携わってきましたが、高齢化などで点字を読む人が減り、デジタルや音声機器の発達など視覚障害者を取り巻く環境・条件も変わってきている。『読み書きサービス』など以前からの京都ならではの対応を維持しつつ、最新機器に応じた自立訓練もできる態勢も整えるようにしています。視覚障害があっても訓練をすれば、特に若い人はスマホやタブレットを上手に扱いますよ」と話す。

 視覚障害者にとって、情報と移動は「二大不自由」といえる。情報面についてライトハウスでは、関連器具や制度に関しても支える態勢づくりを続けていくという。例えば、2019年に施行された視覚障害者らに対するいわゆる「読書バリアフリー法」を生かし、公共図書館との連携を図るなど行政と協力を進めていくという。

 ライトハウスは情報取得推進のために点字図書館や製作体制を整えるだけでなく、情報の中身を伝える企画の充実も図っている。「機器の展示会などを京都市内だけでなく府内でも多数巡回できるようにしたい」「見えない、見えにくい人を対象に医療・教育関係も含めた『京都ロービジョンネットワーク』の中軸を担う役割もしっかり果たしていきたい」と、山本さんはさらなる展望を語る。

 04年に完成した地上4階地下1階建ての新施設本館の開設準備室長を務めた。「視覚障害の方が来られた時に安心して過ごしてもらえる場所であることを大切にした」と振り返る。「そのためには最新設備ばかりでなく、人と人とのふれあいが大切。人工知能(AI)が活躍する時代に変わっても、そこがポイントで、職場でもいつも気軽に積極的に声掛けを心掛けています。ボランティアさんや職員が、利用者さんとともに長年積み上げた成果を若い人たちに引き継いで育てていくのも私たちの役目」と穏やかに笑った。