ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

夫婦で子育て、当たり前

2024.06.24

  • わたしの現場

丸橋 泰子(まるはし やすこ)さん

「京都イクメン図鑑」発行(24/06/24)

NPO法人おふぃすパワーアップで「イクメン図鑑」などの編集長を務める丸橋泰子さん(京都市下京区)

 妊娠と出産、子育てを応援してきたNPO法人「子育て支援コミュニティ おふぃすパワーアップ」(京都市下京区)が、夫婦が共に子育てし、助け合うためのノウハウを発信するフリーマガジン「京都イクメン図鑑」を創刊したのは2012年だった。市の編集講座の受講生が集まって1991年に出版した関西初の子育て支援情報誌「京都子連れパワーアップ情報」が母体になった。

 男性の育児休業(育休)取得がわずか1%台にとどまっていた当時、「イクメン」という言葉自体がほとんど知られていなかった。数多くの新聞、雑誌、テレビ…数多くのメディアが取り上げた。その後は毎年発行し、現在は13号まで続いている。およそ10人で編集・取材するスタッフの大半は女性だ。

 「イクメンという言葉は、広く市民に浸透しました」と、法人代表で創刊号から編集長を務める丸橋泰子さんは語る。

 男性の育休取得率は約17%に上昇したものの、政府が目標と掲げる「2025年に50%」にはほど遠い。統計上の数値は客観的に認識するためには大切だと考える丸橋さんだが、男性の育休取得率の推移について、「ようやくここまできた」という楽観的な言葉も「まだまだ」という否定の言葉も丸橋さんは容易に口にはしない。

 男性にも女性にも職場にも取材を重ねてきた中で、懸命にがんばっている人たちの言葉に耳を傾けてきたからだ。

 その一方で、育児する男性を「エエおとこはん」かのように手放しで賛美することに丸橋さんは、「違う」とも考える。取材や相談事業を通じて、懸命に育児する母親が周囲からほめられることがない。「ワンオペ育児」で、多くの母親が心身とも疲れ果てる現実を丸橋さんは数多く見てきた。

 従業員が千人を超えるような大会社と、中小零細の事業所では社内制度の違いや休みを取得しやすい職場の雰囲気かなど状況は大きく異なる。伝統産業の中小事業者が多い京都では、育休の取得しやすい雰囲気は大企業と同じではないということも痛感している。

 「このままでは京都市から子育て世代の流出が止まらない」。その危機感から丸橋さんらが、最新の13号で特集したのは、「政治家イクメン」だった。京都市から子育て世代が流出する現状から、安心して子どもを産んで育てられる都市に変えていくためには、政治の力が不可欠だという問題意識に基づいて、スタッフは取材して編集にあたった。

 支持党派を問わず衆参議員、府議や市議に自身の子育て経験や施策を尋ねた。

 「私は全くイクメンではないので、妻と息子とはごめんなさいの気持ちです」という言葉や仕事で陣痛の妻に立ち会えなかったというエピソードもインタビューを通じて引き出し、誌面でそのまま紹介した。

 「夫婦2人で育てることが当たり前になったその先には、イクメンという言葉がなくなればいいと思います」。丸橋さんはそう話した。