2024.09.16
2024.09.16
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
ACT-K主催、精神科医 高木 俊介
新型コロナ禍(もう「新型」とは言えないが)から4年、今も第何波が来るなどと警告されるが、弱毒化したウイルスと共存する世界が見えつつある。
感染の苦痛や死亡の惨禍はもちろんだが、この間、対策が厳しく試みられ、多くの人々の生活が困難に見舞われた。そろそろ対策による社会への影響が検証されてよい頃だ。
なかでも問題なのは、ワクチンによる健康被害である。ワクチンには、その効果で誰が救われたかは現実にはわからないが、それによる健康被害は個々に現れるという難しさがある。また接種と個々の被害の因果関係は直接的にはわからないが、どんなに少数でも一定被害が出ることも確実だ。なので、常に議論がある。そのはざまで、実際の被害者の苦悩は続く。
今回のコロナワクチンは、これまでのワクチンとは画期的に異なっている。mRNAワクチンと呼ばれ、生命の設計図である遺伝子を人体に直接接種する。それによってウイルスの一部と同じ構造の蛋白(たんぱく)質を人体細胞が作り、それに人体の免疫が応答する。そうして得た免疫が外来のウイルスを排撃するのだ。ウイルス蛋白質を作る細胞はすぐに死滅し、設計図は人体には残らないと言われているが、実際にはそうならないこともある。人体のしくみは複雑だ。その場合は、免疫が自分自身の細胞を攻撃し続けることになり、自己免疫疾患を起こす。
同じような仕組みで、心筋炎や月経異常が実際に多いことは厚労省も認めた。しかし、接種後の様々な不調を訴えづらい社会の雰囲気が強く、全貌解明にはほど遠い。病状を訴えても、医師は接種との関係を否定することがほとんどだ。複雑な申請方法の救済制度ですら、すでに800人近い死亡者が認定されている。
ワクチン後遺症患者や遺族の全国組織もあり、国賠訴訟に踏み切った。接種後の不調が続くと思えば、ひとりで抱え悩まず、ためらわずに声を上げてほしい。それこそが、今後の医療の正しい発展を促すのだ。
たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ。