ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

自立し生きていく力育む

2024.09.30

  • 若葉

湘南学園「ぴっぴハウス」保育士/後藤裕子(ごとう ゆうこ)さん(24)

 大津市の児童養護施設「湘南学園」に、定員5人の地域小規模児童養護施設「ぴっぴハウス」がある。ここで働く保育士の後藤優子さん(24)は、入職3年目。親と暮らせない子どもを支える仕事で、現在は小学生から高校生の女子4人の支援を担当している。
「ぴっぴハウスは、地域のお家みたいなイメージで、子どもといるのは楽しい」。一人一人とじっくり関われることに魅力を感じている。
 入職のきっかけは、保育学科で学んでいた大学時代に、児童養護施設で暮らす子の映像を見たことだった。「こういう子たちと一緒にいたい」という思いから湘南学園を見学して採用試験を受けた。
 ぴっぴハウスでは、計5人の職員が協力して子どもたちの日常を支える。平日は夕食の支度をするほか、子どもの宿題を見たり、話をしたり。みんなで夕食を食べた後は子どもたちは就寝するまで自由に過ごし、この時間に悩みなどを聞くこともある。宿直の日はスタッフルームに泊まり、朝食を作って洗濯や掃除をする。
 入職前は、「ただただ子どもに寄り添う仕事」のイメージをもっていた。だが、必ずしもそうではなく、職員らが、時には子どもの話を冷静に受け止めることに驚いた。「そこには理由があり、共感だけでなく、他人とコミュニケーションを取る力、将来生きていく力をつけることを意識した関わりが大事なのだと知りました」

「ぴっぴハウス」で子どもたちの洋服をたたむ後藤優子さん(大津市)

 普段は落ち着いて明るい子たちも、けんかしたり、怒られたり、自分にとって良くない状況が起こると、うそをつくことや被害者意識が強くなることがある。背景をたどると、成育環境に要因があり、傷ついた自分を守ろうとしていると感じることも。「この子にとって本当に必要な関わり」に思いを巡らせるが、一人では難しい。そんなとき、同僚と一緒にチームで考えられるのが心強い点だ。
 ネガティブな話やとがった言葉によって人とつながろうとする子たちがいれば、違った会話でも人とつながれることに気づいてもらえるよう、言葉がけを工夫する。そうする中で、「この話は人を嫌な気持ちにさせるんだな」「この話をしてみよう」と自分で考えるようになり、リラックスして表情が明るくなることもある。
 やりがいを感じるのは、子ども本人から「私、成長してる」と言葉が聞けたときだ。「朝起きられない」「人のことを悪く言っちゃう」など困っていると、一緒に悩むのが仕事の一つ。「私がよかれと思っても、本人の気持ちは違うかもしれない。本人が成長を実感しているのがわかると、安心するし、とてもうれしい」
 施設を出た後の自立支援にも関心があるが、当面の目標は、ケアワーカーとしての力をつけること。「日々がむしゃらに頑張ってきたけれど、もう少し視野を広げ、子どもの将来を思って、身につけてほしい力を的確に考えられるよう頑張りたい。学園全体を見渡せるようにもなりたいですね」

(フリーライター・小坂綾子)

湘南学園

 社会福祉法人湘南学園が運営する児童養護施設。1904年に開設。乳幼児フロア、中高生フロアなどの本体施設のほか、地域小規模養護施設が2カ所あり、定員は合計41人。親と暮らせない0歳から18歳までの生活支援や自立支援をする。077(537)0046