ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

パブリックコメント

2024.09.30

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

立命館大名誉教授 津止 正敏

 京都市会のプロジェクトチーム(PT)が「京都市ケアラー支援条例(仮称)」の素案を取りまとめ、今月6日から来月14日まで、パブリックコメントを実施している。同様の条例はいま確認できるだけでも全国30の自治体が制定している。これら先行自治体と比しても随分と特徴のある取り組みとなっているのが京都市会の取り組みだ。

 その1:政令市では初めて議員提案による条例制定だということ。議員提案の自治体は5県1市1町、他はすべて首長提案だ。その2:議員提案にも種々あるが、京都では「全議員の共同提案」による制定を目指していること。素案作りから提案までを全議員・全会派で担うというのは他都市にはない多分に初めての試みである。その3:私たちケアラー当事者・支援者のネットワークが市会のカウンターパートとして関わっているということ。PT会議での意見陳述、要望書の提出等々と市会としっかりタッグを組んできた。

 「ケアラー支援条例をつくろう!ネットワーク京都」をが発足し、活動を始めたのは2022年4月。介護や福祉、医療、教育、療育等々それぞれの制度に沿って活動してきたさまざまな家族会・当事者会のリーダーが「ケア」を合言葉に一堂に会し、相互の理解を深めながら運動に取り組んできた。


 京都市会にもケアラー支援が広がった。志ある議員が支援の意義を主張し条例制定の可能性を追求してきた。理事者が動かないのであれば、「全議員の共同提案」による条例制定を目指すと市会が宣言したのはこの4月。私たちは即座に「市会の英断」と歓迎し、政治の扉が開いたと感じた。


 パブリックコメントを、私たちはケアが尊重されケアラーが大事にされる社会の実現を目指す格好の機会と位置付け、さあ!収穫の秋、とばかりに額に汗して作業に励んでいる。ケアラーと支援者だけでなく、多くの市民にも知らせたい。読者諸兄姉も声を上げていただけたら嬉(うれ)しい。

つどめ・まさとしけ氏
1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学教授。大学院社会学研究科修士課程修了。 京都市社会福祉協議会(地域福祉部長、ボランティア情報センター長)を経て、2001年から現職(立命館大産業社会学部教授)。2009年3月に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、事務局長を務める。著書に『ケアメンを生きる-男性介護者100万人へのエール-』『男性介護者白書―家族介護者支援への提言-』、『ボランティアの臨床社会学―あいまいさに潜む「未来」-』、『子育てサークル共同のチカラ-当事者性と地域福祉の視点から-』など。