ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

修光学園

2024.10.14

  • 広がる 地域の輪

練り込み陶芸、質の高さ輝く

知的障害ある人の自立・就労

 観光客の姿も目に付く京都市左京区修学院。比叡山のふもと、修学院離宮にもほど近い田園に所在する「修光学園」は、同名の社会福祉法人(森のり子理事長)が、主に知的障害のある人を対象に日常生活の自立と就労による社会参加を目指して運営する施設のひとつ。1988年、民間法人が設置する同種の施設としては市内で3番目に古く開設された。
 同法人は同じ区内に生活介護事業を行う「光の家アクティブセンター」、パンや焼菓子、ケーキなど製菓作業で地域に親しまれる就労移行・就労継続支援B型施設の「飛鳥井ワークセンター」「ワークセンターHalle!」などを運営している。
 なかでも修光学園(定員20人)は、陶芸作業を活動の中心に据え、多種類の色の違う粘土を何層にも積み重ねて陶土をつくり、柄や模様を出していく珍しい「練り込み」という技法を用いて、カップや皿、花器やぐいのみなど多くの製品を製造販売している。「練り込み箸置き」がかつて、一般のコンテストでベストデザインコンテストに入選するなど、質の高さでも知られている。

陶器のやすりかけ作業に熱心に取り組む利用者と職員ら(京都市左京区)

 陶芸室には2台の電気窯があり、利用者らは作業台の上で色の違う粘土を力を込めてこね、何層にも積み重ねて陶土をつくる作業や食器や花器などに整形する作業を担う。乾燥させ焼成する前の製品に細かな目のやすりをかけて模様を鮮明にし、表面を滑らかにするやすりかけ作業なども担当している。施設開設頃から30年以上利用し、陶芸に携わる利用者の一人は、乾いた陶器を壊さないように力を微妙に調整しながら磨き、「やすりかけは大変」と言いつつ丁寧に、熱心に作業を続ける。
 陶芸を指導する職員らも「利用者さんと職員が一体となって仕事をやり遂げた時には達成感があり、利用者さんが喜んでいるのを見ると自分もうれしいし、やりがいを感じる」「陶器では、製品としての完成度にも自信があるので、それもやりがい」と話している。
 生活介護では、描く、作る、身体を動かすなど、個々の思いを表現する「表現活動」も見守り、発達障害のある人への専門的な支援にも取り組んでいる。
 法人の森亮・常務理事(47)は「子どもや高齢者の福祉に比べて知的障害者やその施設への世間の認知度はまだまだ低いと思う。触れ合うことが少ないと、どこか他人事になってしまう。もっと知ってもらいたい」と話す。同法人では地域とのつながり重視し、一般向けの陶芸教室を開いて練り込み技法などを体得できる施設として知られ、喜ばれてもいるという。また、福祉施設での担い手・人手不足も懸念される時代になり、法人全体で、学校とのつながりにも配慮、小中学生の施設体験やチャレンジ体験、大学生のインターンシップ、福祉系学生の実習受け入れなどもして、介護や就労支援、生活支援の実際など幅広い活動を体験してもらえる取り組みや、学園祭での施設製品も紹介している。11月16日には、「オープンデイ」を開き、陶器や菓子・パンの販売とともに練り込み陶芸や絵付けの体験企画も予定している。

修光学園

1985年に日本福音ルーテル修学院教会内で、養護学校卒業者の働く場確保などの趣旨で無認可の共同作業所的な活動で始まった修学院学舎を母体に87年に社会福祉法人認可。88年に施設を開設。就労支援、生活介護、共同生活援助などの事業に取り組んでいる。京都市左京区修学院山添町075(702)1700