2024.10.29
2024.10.29
西院老人デイサービスセンター ケアワーカー/岡田侑弥(おかだ ゆうや)さん(24)
高齢者の福祉サービスとは異分野からの新卒として、この世界に入った。
仕事を始めた当初は「高齢者のお世話をする仕事だと、『してあげる』という感覚でとらえていました」という岡田さん。3年目となる今では「一人一人異なる利用者さんの自立や社会参加を支援する役割だという方向へ変わっていきました」と語る。変化の大きな要因は「職場の環境」だという。
京都産業大の法学部ゼミで地域政策を学んだ。卒業後の進路として「人のために貢献でき、地域に根ざした仕事がしたい」との方向を思い抱いていたという。
ケアワーカー職として2020年春に入職したのは、京都で最大規模の100を超える事業所を運営する社会福祉法人「京都福祉サービス協会」だった。新卒採用者を対象にした短期間の研修を経て、高齢者福祉施設西院のデイサービスセンターに配属後、先輩職員からマンツーマンで入浴や食事支援など実地の指導を受けた。
西院のデイサービスセンターは、利用者が「働く」ことを通じて社会参加を支援し、生きがいにつなげる「sitte(シッテ)」と呼ばれるプロジェクトに、岡田さんが配属される数年前から独自で取り組んでいた。
現在も洗車や人形用に布の刺し子づくりのほか子ども食堂の調理にも野菜を刻む作業に利用者が加わっている。「謝礼」として、利用者は金券を受け取り、連携した商店街で買い物できる。
「利用者さんのやりたいこと、できることを通じて社会との接点となる取り組みをしているのが、うちの職場の持ち味です。レクリエーション先や内容についても、できるだけ希望をくみとれるように職員が毎月会議をします」
商店街で買い物した品を示す利用者の笑顔を見て岡田さんはやりがいを感じるという。
記者が取材に訪れた日にも「洗車へ行ってきまーす」と元気な声で外出する利用者と玄関ですれ違った。子ども食堂で親子を迎えるため、利用者が野菜を刻んだカレーが温められていた。
介護スキル面で当初は目の前の1人の利用者に対応することに精いっぱいだった。「今では部屋全体へ広がって一人一人の症状や個性に合わせて転倒など事故面のリスクがないか、できるだけ多くの方を気にとめています」と岡田さんは話す。
介護の仕事へ進むかどうか、迷っている年下の世代にはこう伝えたいと岡田さんは思う。「人の人生にダイレクトに関わるやりがいのある仕事です」。利用者が人生を楽しみ、満足されているかそうでないか、よくも悪くも言葉や表情から直接伝わってくるという。理論やマニュアルで伝えることではない。
学生時代にイメージした「地域に貢献できる仕事」は、現場の体験に裏打ちされたものへと変わっていった。「社会参加が利用者さんの喜びにつながる」との実感は、ずっと大事にしたいと岡田さんは考えている
高齢者福祉施設西院
京都福祉サービス協会が運営する事業所の一つとして1999年に開所し、デイサービスセンター、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどを備える。2018年から始めた「sitteプロジェクト」は、NHK厚生文化事業団の「認知症とともに生きるまち大賞」を受賞している。京都市右京区西院上今田町、075(812)6711