2024.11.18
2024.11.18
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
イラストレーター・こどもみらい館館長 永田 萠
よく晴れた土曜の朝。出勤途中の地下鉄丸太町駅のエレベーターで、2人用バギーを押す若い男性といっしょになった。会釈してバギーを見ると、2歳くらいのかわいいふたごのお嬢ちゃんが気持ち良さそうに眠っていた。「こどもみらい館にいらっしゃるのですか?」いきなり話しかけて驚かせてしまってはいけないので、あわてて「職員です」とつけ加える。
今日はこどもみらい館の誇る二大人気事業の『ふたご広場』と『おとうさんといっしょ』が開催される日なのだ。『ふたご広場』はお母さんも参加できるが、『おとうさんといっしょ』は文字通りお父さんのみ。この日は18組も申し込みがあると担当職員から聞いていた。「午後も参加されるのですか?」「はい」「よく来てくださっているのですか?」「ほぼ毎回です?」。元気で明るい声の即答だった。
10時からの『ふたご広場』はこれから出産される予定のお母さんや、出産後まもないご両親もあり、その間をさきほどのお嬢ちゃん達のような少し大きいふたごさんが何人も遊んでいる、という楽しい光景だった。
午後の『おとうさんといっしょ』は講師に男性保育士を迎えていたので、圧巻の「おとうさんがいっぱい!」だった。中には「今日が初めてです」という若いお父さんもあって、抱っこ紐(ひも)の中の赤ちゃんを愛(いと)おしそうに見ながら、先輩お父さん達に「夜泣きにはどう対処すれば?」と質問されているのもほほえましかった。「もちろんぼくが即、起きてあやします」と頼もしい返事にわたしはそっと拍手。こんなに小さな赤ちゃんと2人きりで外出するなんて、どれほど勇気がいることか。でもいつかこの瞬間は、かけがえのない幸せな思い出になる。お父さんだからこその。
「こんなすてきなお父さんで、お家にいらっしゃるお母さんもご安心ね」担当職員にささやくと、彼女はいたずらっぽく笑って答えた。「でも今日は、ご心配で外のロビーでお待ちのお母さんが3人ほど…」。いいなぁ、それも。
ながた・もえ氏
出版社などでグラフィックデザインの仕事に携わった後、1975年にイラストレーターとして独立。2016年より京都市子育て支援総合センターこどもみらい館館長に就任。