ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

やめよう、面会制限

2024.11.25

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ACT-K主催、精神科医 高木 俊介

 新型コロナウイルス感染症が5類感染症にされて一年半になる。世界的には、その直前のWHOのパンデミック「終了」宣言で各国がコロナ対策の様々な規制を撤廃した。世界中で多くの犠牲を出した疫病は、過去のものになった。

 5類感染症になったということは、この感染症に対して政府が強制的な対策はしないということだ。対策は民間の判断に任され、たとえ感染したとしても個人に対して強制的な措置は行えない。感染対策を続けるのがよいとしても、個人に強制してはならない。


 ところが、いまだに病院や施設ではコロナ禍の時と同じ厳しい規制が行われ、ほぼ強制となったままである。特に、患者さんの面会制限がそれである。ほとんどの病院がこれらに厳格な制限を設けている。人数が登録してある家族2人まで、時間は15分以内という短さ、子どもが面会に来るのは原則禁止というところが多い。面会は一律禁止というところすらある。これらに感染対策としての科学性はなく、現在の感染状況にもそぐわない。にもかかわらず、このために家族の死に目にすら会えない、孫の顔も見られず孤独に過ごす、わざわざ海外から面会に帰国しても最初に登録してある家族以外は断られたなどの理不尽な事例が現実に続出している。

 面会は患者が安心して療養し、治療意欲を高めるために必要な治療の一環であり、患者の権利である。それを乏しい根拠で奪うことは人権侵害と言ってよい。

 もし患者が感染したらどうするのだという反論がある。だが、面会者からの感染よりも病院職員からの感染のほうが可能性が高い。患者が感染から守られる健康権も、親しい人と会う幸福権も共に人権である。どちらを尊重するかは、状況からそのつど判断するものだ。現在の感染状況では、一律に厳格な面会制限を行う正当な根拠はない。

 病院の安全は大事だが、それにこだわるあまり、より大きな個々人の人としての幸福と、社会のゆとりを失ってはならないだろう。

たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ。