2024.12.02
2024.12.02
技能実習生と現場 橋渡し
広島と京都で計五十数年、さまざまな仕事と事業を手がけてきました。いま、京都介護サービス協同組合(組合員40法人)の代表理事を、三つの会社で会長を務めていますが、事業を続けるうえの基本理念は一貫して変わりません。「人は人のために在る。人のために尽くしてこそ人」
協同組合トップとして、外国から技能実習生などを介護職場へ受け入れる仕事に携わってみて、あらためて自らの企業理念の趣旨をかみしめています。
私はもともと機械設計の仕事が専門で、介護分野の事業を始めたのは24年前です。現在は、認知症対応のグループホームを京滋の計3カ所で、デイサービスとケアプランのセンターを伏見区で運営しています。
介護事業に参入して、日本認知症グループホーム協会京都府支部の支部長を務めた10年ほど前、現場の人手不足を訴える声は切実でした。「技能実習生を呼んだら」。ある会合で提案すると、周囲から「ぜひやって」と懇願されました。実習生の受け入れ事業は、営利企業ではできません。そこで設立したのが協同組合だったのです。
受け入れ事業ができる監理団体の資格取得は要件が厳格で、準備に3年かかり実際の事業開始は2018年になりました。人材はベトナムで探すと決め、現地へ飛んで信頼できる送り出し機関と提携を結びました。
提携に当たっては「人のために尽くしてこそ人」という私の理念にも合致する機関を慎重に選んだつもりです。事業を始めてすぐ、コロナ禍が襲来。これをなんとか乗り切り、現在までに約50人の実習生を受け入れることができました。
実習生の中にはミャンマーの若者も含まれます。彼らは「お年寄りの世話は、功徳を施すことであり来世の幸せにつながる」と、仏教国ならではの考え方を持つ人が多く、介護職場にふさわしい人材です。
組合では、介護福祉士の資格取得や特定技能への移行を目ざす実習生に向け随時、講習会や日本語勉強会を開き支援しています。職場で必要な介護記録を作成する能力養成のため20年からは「日本語作文コンクール」を実施。5回目の今年は30施設から89通の作品が寄せられました。この取り組みに今年、京都府から知事賞をいただき関係者の大きな励みにつながりました。
技能実習制度は数年後に廃止され、新制度に替わります。それも見据えながら、実現したいのが教育体制の充実。実習生が学ぶ日本語学校の開設は目標の一つです。さらに、府北部の人材紹介に向けた協会支部開設も、近い将来に具体化できるよう進めていくつもりです。
よしたに・まさき
1942年、広島市生まれ。自動車の「マツダ」勤務を経て独立。機械設計の会社経営などに携り95年、京都に移って介護事業にも乗り出す。2015年、業界連携や外国人技能実習生受け入れの組織「京都介護サービス協同組合」を設立。実習生の資格取得や日本語の支援を進める。23年、厚労大臣表彰。京都市下京区在住。