2024.12.02
2024.12.02
《自閉症スペクトラム障害》
自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)は、幼少期から社会的コミュニケーションや人間関係において持続的に困難があり、行動や興味が限定的で繰り返しを好む性質や、感覚の過敏さや感じにくさなども伴う、脳の働きに生まれつきの違いがある発達障害(神経発達症)です。病気ではなくその人なりに成長、発達をしていきますが、生涯にわたり障害特性を持ち続けます。
症状や状態像には個人差、年齢による違いがあります。幼少時には視線を合わすことや人見知りなどの社会的行動が少なく、こだわりやかんしゃく、集団参加困難といった子育ての難しさがあります。学童期には学校活動や教科学習が苦痛となることや、人間関係をうまく築けずいじめ被害や精神的に疲弊することがあり、就職してからも仕事が臨機応変にこなせないことや対人関係、家庭生活の不調から、精神疾患を抱えてしまうことも少なくありません。
診断は発達歴や行動観察、心理検査などの情報をもとに専門医が行います。発達障害者支援法が制定されて来年で20年となり、専門的な診断ができる小児科医、精神科医が増え、子どもから大人まで診断を受ける方は増えました。また幼少期では養育者への相談や療育、学齢期では特別支援教育や高等教育での学生支援、放課後デイなどの福祉支援、就労においては障害者職業センターでの評価やコーチングなど、十分とは言えませんが支援は広がっています。
自閉症スペクトラム障害の人は、日常生活の中でその障害特性に起因する困りごとを抱えやすく、合わない環境ではさまざまなトラブルなど周囲の人を困らせるような行動に出ることもあります。このような場合、問題行動だけを見て止めようとしても改善せず、問題と原因となる特性を氷山に例えたモデル(図参照)で捉え、特性に配慮した対応を試すことが必要です。
具体的な対応としては、生活の見通しや物事の意味、社会的なルールを目に見える形でわかりやすく伝えることや、その人が伝えやすく伝わりやすいコミュニケーション方法を見つけること、感覚の過敏さや対人場面の疲れやすさに配慮し静かに落ち着ける場所を作ること、その上で独特の興味や長所などその人らしさを生かせる役割を用意することなどがあります。
私たち一人一人の気づきと配慮が増えることで、発達障害のある人がその強みを生かした役割を見つけられる社会、誰もが個性を尊重し合える生きやすい社会になると信じています。
(児童精神科医 田中一史)