ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

機器購入で製造量増 品質保持や省力化も 成功体験がやりがいに

2024.12.10

  • 障害のある人の工賃増へ向けての取り組み助成
  • 歳末ふれあい募金
  • ともに生きる

工賃増への取り組み助成

 京都新聞社会福祉事業団は、障害者らが働く場で商品開発などに役立つ設備の整備・機器購入などを支援する「工賃増へ向けての取り組み助成」とし2023年度は13団体(京都市7、京都府5、滋賀県1)に総額245万円を贈った。
 京都市南区のNPO法人エルファ共同作業所(就労継続支援B型)は、助成金でクッキー製造の生地を作るフードプロセッサーを購入した。同所では「ささえあい、ともに生きる」を理念に10人近くの職員と知的障害などの利用者約30人が「コリア風惣菜(そうざい)」作りや菓子の箱詰めなどをする。


 クッキー作りは職員の霜越桃花さん(28)と利用者2、3人が携わっていたが、小麦粉にバターや三温糖などを混ぜて生地を作るのに半日がかり。生地を寝かせて動物や星形などに型抜きし、業務用オーブンで焼き上げるのにさらに1日かけていた。新型プロセッサー導入で1度に作れる生地量が増え、作業に当たる人数も増やせるので、製造量を2年で約2倍にする計画を立て、活用している。
 「コロナ禍」で減っていた地域イベントなどが徐々に再開してクッキーの販売量も増えそう。さらに作業所周辺に宿泊施設が増えてインバウンド客も目立ち、隣接するカフェスペースでの飲食や土産用の需要も見込めるという。

新しいフードプロセッサーでクッキーの生地を作る霜越桃花さん(左)と利用者(11月21日、京都市南区)

 霜越さんや利用者は「型抜き前の生地の厚さをだれがやっても均等になるようにするのが難しい。型抜きも一部が欠けたりしないよう工夫がいる。上手にできたときは面白いしやりがいになる。今後も丁寧に手作りするというのは変えず、販売数を伸ばして工賃増につなげたい」と笑顔を見せる。相談支援専門員の佐藤大さん(45)も「各自が選んだ作業をゆっくりと続け、生活リズムを整えたり、他人との関わりの中で助け合うことを経験できる場、働くだけでなく、ありのままの自分でいられる居場所にしたい。家で1人過ごしていた人や対人関係が苦手な人が、ここで少しずつ心を開き自分のことや気持ちを話してくれるようになることもある」と話す。
 京都府精華町のNPO法人プラッツが運営する就労継続支援B型と生活介護の小規模多機能型事業所「おーぷんせさみ」ではエンジン付き草刈機と除湿器を購入した。


 同所では数人の職員と約20人の利用者がクッキーや巾着袋などハンドメイド雑貨を作っている。借りた畑で季節の野菜や唐辛子なども無農薬で育てているが、夏場は熱中症対策や草刈りに追われ農作業に十分手が回らない時期もある。収穫した唐辛子は畑近くの温室を借りて乾燥させているが、量が多いと事業所内で乾燥作業を行うこともあり、多雨期には湿気で品質劣化を招くこともあったという。草刈機は畑周辺で、除湿器は唐辛子の乾燥用に活用され、鬼塚章子施設長(56)は「草刈機は斜面でも、非力な女性でも安全に動かせる。赤く熟した唐辛子の収穫は、時間を忘れて夢中になるほど。草刈りが省力化でき助かります」と喜んでいる。

購入した草刈機を操作する鬼塚章子施設長(11月25日、京都府精華町)

 本紙の歳末ふれあい募金などを基に1団体の上限額30万円まで助成。25日まで募集している。