2024.12.23
2024.12.23
「働く」に焦点しぼり支援
農業やカフェなど事業多彩
京田辺市の三山木駅近くに、障害のある人や生きづらさを抱えた人たちが通所する「アシストセンターえー」の拠点施設がある。
就労移行支援、就労継続支援B型、生活介護、就労定着支援の事業を通じて、「働く」に焦点を当てた支援に取り組んでいる。
運営するのは、有限会社ライフ・アシスト。児童デイサービスやショートステイ、相談事業所など多彩な事業を展開する中で、就労支援の必要性を感じて2014年に開設した。「『働く』ということを意識した支援です。支援学校を出ている人だけでなく、大学を出て就職したけれど仕事が難しかった人もおられる。通所する人たちのに必要性に合わせて、サポートしています」と施設長の伊藤佑将さん(40)は話す。
ライフ・アシストは、「親亡き後」の豊かな暮らしを考える中で05年に設立。京都府の認可を得て、スタッフ4人で居宅支援と短期入所事業を開始した。社会福祉法人やNPO法人ではなく、あえて有限会社にしているのは、「必要性に合わせてスピード感をもって事業展開ができるように」という思いからだ。ニーズに合わせて児童向けのサービスを提供する中で、成長してきた利用者の若者たちの就労や生活を支えようと、「えーる」を立ち上げた。
「えーる」には、現在18歳から50代までの研修生(利用者)が通う。農場があり、米作りや畑しごとのほか、地元企業から依頼された箱折りなどの軽作業、製茶作業などに取り組んでいる。また、施設内に短期入所や日中一時支援、移動支援などの生活力を高める支援を行う「ら・ぽると」があり、ここから「えーる」に通うことができる。「グループホームに入居しながら仕事に行く」ような体験ができるのも、一つの特長だ。「親亡き後を考えると、『働く』ことも『生活』も大事」と伊藤さん。
近年は、地域との関わりも増えてきた。20年に併設のカフェ「OKUDO―YA」をオープン。収穫した野菜などを使ったランチを提供し、「えーる」で作った惣菜や菓子などを販売する。当初は研修生の保護者の交流の場づくりを想定していたが、地域住民や一般客の利用でほぼ毎日満席になる。収穫した野菜などを使ったランチを提供し、オープンキッチンで、研修生が働く様子も見える。ここで作った弁当を販売するため市役所などにも出かける。
また、担い手不足の農家の手伝いを依頼されることもある。「農園に出かけての収穫作業などは、研修生も非常にやりがいを感じるようで、自社農園での作業とは、違った心もちになるようです。研修生の仕事ぶりを地域の人に見てもらえるのはとてもありがたい」と伊藤さん。このほか、地域の自治会から依頼されて公園の清掃活動をする仕事なども担う。
今後は、京田辺市が作る公園に「施設外就労」に出向く計画もある。「時代とともに求められる支援は変わってくる。それらを見て、選択肢を一つでも増やしてサポートしていきたい」とライフ・アシストのゼネラルマネージャー井山眞弓さん(60)。生きにくさを抱えた人が自分らしく暮らせるように、「えーる」の挑戦は続く。
(フリーライター・小坂綾子)
アシストセンターえーる
2014年に有限会社ライフ・アシストの就労移行支援事業として開設。18年に就労継続支援B型事業と就労定着支援事業、20年に生活介護事業を開始。幅広い年齢や障害特性の人が利用し、さまざまな支援が必要な人から一般就労を目指す人までが通う。京田辺市三山木中央6丁目。0774(26)6835