2025.01.13
2025.01.13
「同行」することに力入れ
各機関との連絡や橋渡し
「新しい女性支援のかたち」をテーマに、京都市が昨年7月に開設した女性のための相談支援センター「みんと」の役割を学ぶ研修が、京都地方法務局(上京区)で12月半ばに開かれた。
聞き手の人権擁護委員はそれぞれ福祉や教育、司法など多様な分野で社会経験や市民活動を一定積んで人権にかかわる相談に応じる役割だ。「みんと」の存在を知っているかと尋ねた講師の市男女共同参画推進担当係長の問いに、多くの委員は自信なさげに首をかしげた。
性暴力や家庭内暴力など緊急度の高い困難を抱える女性に応じる既存施設として府家庭支援総合センター(東山区)などがあることは委員に一定認知されている。相談者を守るために場所は非公表となっている「みんと」の存在は、委員の間で十分に浸透していないことがうかがえた。担当係長の話が「同行して支援していることに力を入れています」とおよぶと、「なるほど」「そうか」とうなずきながら聞き入る姿が広がった。
「みんと」には、息子からの暴力で家を出たい高齢女性、親からの虐待や過干渉で家を出たい若年女性…さまざまな相談が寄せられる。
解決や軽減のためには、生活保護申請や各種福祉手当の手続きなど複雑で多岐にわたる。組織や機関、担当部課ごとに必要となる事項も異なる。相談者は窓口が変わるたびに、自らの苦しみや困難を口にすることに疲れ果て、傷つく。応じる担当者の不適切な言動や質問は二次被害につながりかねない。同行支援の役割は、そんな苦しみを和らげるため必要に応じて「みんと」の相談員が同行する。福祉施策に関する行政の各機関との連絡調整や民間団体を橋渡してコーディネートしていく。
「被害経験を言葉にすることや自己主張が困難で、人間不信のために意思を表明できない相談者もいるのです」と担当係長は説明した。「『どうして逃げないの?』『もっと早く相談すべき』など相談者を責めないでください」と言い添えた。
開設してから寄せられた相談は累計400件を超える。「まだまだ実際のニーズは潜んでいる」というのが担当者の実感だ。
「みんと」の存在をさらに多くの人たちに伝えるため、連絡先を記したカードを区役所などの女性トイレに置いている。カードを配布した中学校の生活指導教諭から「もっとカードがほしい」と要請もあったという。
DVや性暴力などに対応し、支援や相談に応じてきた民間団体との交流にも力を入れている。開設まもない昨年7月には十数団体と交流会を催した。
開設初年度は周知面では試行錯誤と模索もあるが、2年目に向けての手応えも担当係は実感している。「官も民も含めたそれぞれの組織や団体ごとにカバーできる分野や積み重ねたノウハウは異なります。相互の信頼関係を深めてさらにネットワークを広げていきたい」。
つながりを生かした支援が、「みんと」の持ち味だ。
京都市女性のための相談支援センター みんと
相談ダイヤルは075(874)6312。月曜~土曜の午前9時~午後5時15分(祝日、年末年始を除く)。相談者以外には場所を非公表。相談員8人のほか、心理カウンセラー(週に1回)、精神科医(月に1回)が応じている。
※紙面では場所の特定につながることを避けるため、担当市職員の顔がわかる写真や姓名は表示していません。