2025.01.27
2025.01.27
児童養護施設「平安養育院」 保育士/梅原三和(うめはら みわ)さん(22)
京都市東山区の児童養護施設「平安養育院」。ここでは、家庭で暮らすことが難しい子どもたちが過ごしている。幼児クラスを担当する入職2年目の保育士梅原三和さん(22)は、子どもたちが気持ちよく、安心して過ごせる環境づくりに日々まい進する。「大変なこともあるけれど、子どもはかわいいし、楽しい。ここの大人はみんなあなたのことが大切で、大好きだよと伝えています」
幼児クラスの仕事は、早出の当番は、幼稚園に行くまでの準備と家事、出迎えやおやつ。遅出の当番は、外遊びや翌日の準備と夕食、お風呂など就寝までの生活のサポートで、泊まり当番もある。
幼少期から保育士になりたかった。引っ込み思案の自分に保育園の先生が温かく接してくれて、「こういう先生になりたい」とあこがれた。母親も保育士で、高校生のときに児童養護施設の本を紹介されて読み、「親と過ごせない子どもに慕われるような存在になりたい」と思うようになった。
短期大で保育士を目指して学び、実習先が平安養育院に。幼児グループを担当し、アルバイトを経て、卒業後に正職員になった。
「初めて来たとき、子どもたちとの関わりが楽しくて。家庭と同じように休みの日にはレジャーに出かけて遊びました。寝かしつけの時間には、『寒いやろ』って、布団をかけてくれて。この子たちが大きくなるときに一緒にいたいと思いました」
正職員になって気づいたことがある。何でもできるように振る舞っていた子が、本当はとても頑張っていた、ということだ。「経験のある職員の前では、怒ったり、わんわん泣いていて。素の自分が出せるのは、安心できる場所だから」。自分にもそういう面を見せてほしいと思う半面、どう関わればいいのか、考えるようになった。
声かけ一つで、子どもの気持ちが変わる。一人一人の話をじっくり聞き、気持ちを想像したり、難しいときは先輩のまねをしてみたり。子どもたちから「この人にならなんでも言える」と思ってもらえるように、そして、人としてお手本になるように心がけている。
難しいのは、ここで暮らす子どもたちの生育環境や、保護者との交流のもち方がそれぞれ違うことだ。自宅に泊まれる子もいれば、家族と面会できない子もいる。「あの子は帰れるのに、なぜ私は会えないの?」と寂しい思いをぶつけられることも。そんな中でみんなで対応を考える。経験の少ない子がいろんなことができるようになったり、気持ちの切り替えが難しかった子ができるようになったり。成長の様子をそばで見られることはやりがいにつながる。
「児童養護施設の仕事には、暗いイメージをもたれることもあるけれど、実際は、家庭的で、子どもたちと近くで関われて成長も感じられる、とても魅力的な仕事。見学に来てほしいし、もっと知ってほしいなと思います」
(フリーライター・小坂綾子)
平安養育院
社会福祉法人平安養育院が運営する児童養護施設。1905年に実業家丹治直次郎が創設。その後、浄土宗総本山知恩院が設立する財団法人となり、52年に社会福祉法人に。家庭で暮らすことが困難な2歳から18歳の児童を養育する。本体施設のほか、地域小規模児童養護施設「彩りの家」もある。定員54人。075(561)0680