ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

相手受け止め寄り添う 絵にも音楽にも共通 「いのちの電話」活動など語り合う(25/04/14)

2025.04.14

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ともに生きるフォーラム

 京都新聞社会福祉事業団主催の「ともに生きるフォーラム」が3月29日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。京都市の「子育て支援総合センターこどもみらい館」館長でイラストレーターの永田萠さんの講演や、京都市在住で海外でも演奏するフルート奏者の園城三花さんと弦楽器によるカルテットコンサートも催され、訪れた市民ら約200人が和やかな雰囲気の中、耳を傾けた。

  後半には永田さんと園城さんのふたりのトークセッションで「いのちの電話」やそれを支援するコンサート活動も話題に上り、「一人一人の命を大切にし、相手を受け止め、寄り添うことの大切さ」などについて語り合った。

 永田さんは「ふれあう手とかさなる心」と題して話した。イラストレーターとなった経緯などを「子どもの詩をもとに絵を描く仕事をしたのを契機に、子どものために絵を描くことを一生やっていくことにした。その延長線上に、こどもみらい館の館長もやっている」と少女時代からのエピソードを交えて話した。同館には「さまざまな厳しい状況で相談に訪れる親子がいる」ことにも触れ、「京都市はぐくみ憲章」などにいう「育む」という言葉は「親鳥がひなを羽で包み込むところからきている」と説明し「子どもの健やかな成長には親をはじめ信頼できる大人に何人会えるかが大きな意味を持つ」と指摘した。

トークセッションで笑顔で語り合う永田さん(左)と園城さん

 第2部のコンサートでは、園城さんが率いるカルテットがバイオリン、ビオラ、チェロの弦楽器とフルートによるアンサンブル演奏で5曲を披露した。冒頭に現在は戦禍の下にあるイスラエルの女性が作曲した「共鳴、響きあい」という意味のタイトルの曲を演奏。園城さんは「人と人との出会い、触れ合いのさまを連想させるような曲で、『ともに生きる』と題されたフォーラムで演奏することとも響きあうような曲では」と紹介した。他にはデビューアルバムにも収録し、児童養護施設での演奏も印象に残るという「カノン」、季節にかなった「さくらさくら」など知られた曲を聞かせた。


 トークセッションでは2024年度「京都新聞福祉賞」を受賞した「京都いのちの電話」について、賞の選考委員も務めた永田さんが、40年を超す長年の活動の意義を取り上げた。園城さんは同活動に感銘を受け、現在は経済的に応援するチャリティー「花と名曲いのち奏でるコンサート」を全国的に展開している。自らの経験を踏まえ、「自殺を考えるほど追い詰められるよりもっと前から、いやなことを少しずつ吐き出しておく、自分の思いのたけを話すことが大切だ」と応じた。園城さんは「疲れた心に寄り添う、いのちの輝き・尊さ」をテーマにしたコンサートも各地で開いており、災害被害を受けた能登でのコンサートや、小樽市でのコンサートのチラシに永田さんのイラストを使ってコラボしたことにも触れた。


 2人は「いのちの電話」の活動について「自殺願望を生きる希望に変えていく活動ともいえる電話」し、「傾聴という行為、話に耳を傾けることで相手を受け止めることが大事」「相手の立場に立って聞くことが肝要」と語り、そうした他の人に思いをいたす心は、絵にも音楽にも共通する要素があるという点でも同感していた。

園城三花さんらによるカルテットコンサートでは、フルートと弦楽器のアンサンブル演奏が披露された(いずれも京都市中京区の京都新聞文化ホール、3月29日)