2025.05.19
2025.05.19
NPO法人「ロバの会」
京都市内を拠点に全国の視覚障害者を対象に書籍や各種情報の音訳CDを無料貸し出しするNPO法人「ロバの会」は今年、発足から満50年を迎えた。
利用登録者約1200人に、本のほか新聞や雑誌のニュースや医療情報、音楽や旅行の話題などを集めて約20時間にまとめたCD「万華鏡」(利用約800人、年4回)や、大手百貨店の通販カタログの音声CD(同約500人、同)などを郵送している。はり師、きゅう師などの国家試験の解答と解説やプロ野球12球団の選手名鑑も音訳している。
現在は32人いるボランティアメンバーのうち15人ほどが音訳朗読を担当。自宅に録音機器を置き、時間を見つけて吹き込み作業をする。その校閲や編集を数人がかりで行っている。家で吹き込みするので静かな環境が求められ、犬の鳴き声や救急車のサイレンなどがあると中止して、静かになるのを待って再開する。

どんな情報をピックアップしてCD化するかに頭を悩ます一方、百貨店の通販カタログでは「こんなものを買いました」「聞いているとウインドーショッピングをしているみたいで楽しい」などの声も届く。はり師などの国家試験の解答と解説は受験者から、期待して待っていてくれる真剣さを感じる。「期待されているんだな、役に立ってるなと思え、やりがいにつながる」とメンバーは言う。
選手名鑑など期限があり時間に追われる作業は大変。2月中旬ごろに発表されたものを開幕までの約1カ月で吹き込む。以前は一人の男性メンバーが12球団すべてを担当していたが、「本人も70代後半になり、現在は1リーグ6チームを担当し、残りは1チームを一人ずつが担当している。熱心なファンが百人ほどいて待ち望んでいるので」と代表の端野順子さん(77)。吹き込んで音声化したデータは国立国会図書館にも提供している。
医療情報の音訳は、以前は看護師さんなど専門知識のあるメンバーもいて対応できたが、なかなか難しい。東洋医学の用語も難しく「野球用語も、メンバーに女性が多いので以外に弱い」と端野さん。大阪や京都など関西のメンバーが多いので朗読の際のアクセントにも気をつかう。「英語を原語に近い発音にするか、日本語化したカタカナ英語で読むか」なども悩むという。通販カタログでは、値段と数字の間違いをしないよう細心の注意をはらう。地名や人名など固有名詞が多様化しており、音訳の際の読み方の確認も難しい。最近はIT技術も進み、パソコンを通じた情報通信など便利になると同時に扱いも難しく、「パソコンの扱いなどに詳しい若いボランティアを募りたい」とメンバーら。
CDが年間1万枚ほども必要で、活動資金にも苦労するが、補助金や寄付を募ってやりくり。経費削減のためにCDを発送する封筒づくりを皆で行い、「点字毎日」音声版(年25回)の制作などで事務所経費を捻出している。だが、メンバーは中高年女性も多く、世間話も交わしながら和気あいあいの雰囲気で作業を続けている。
(ライター 山本雅章)
NPO法人「ロバの会」
1975年、「京都朗読奉仕会ロバの会」発足。90年、通販カタログテープ版送付開始。2004年、京都市中京区壬生に現事務所開設。07年、「万華鏡」製作発行開始。同年、NPO法人認定。10年、「点字毎日音声版」製作開始。電話・ファクス075(821)0844(受付は水曜の午前10時~午後3時)。