ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

在宅介護者に休息を

2025.07.07

  • ふくしナウ

《レスパイトケア》

 「レスパイトケア」という言葉をご存じでしょうか。レスパイトとは、一時中断、休息、息抜きという意味です。日々の介護疲れや冠婚葬祭などの理由で在宅での介護ができなくなる場合に、数時間もしくは宿泊を含む一定期間、医療機関や福祉施設などがその代わりを担い、日頃ケアを行っている家族などの心身のリフレッシュや負担軽減を図る取り組みをいいます。在宅で行う支援には、デイサービスや訪問看護などのサービスを利用する方法があります。在宅が難しい場合にはショートステイ、医療的な管理が必要でショートステイ利用が難しい場合には病院が受け入れるレスパイト入院といった方法があります。

 家族に介護が必要となったとき、家庭で誰がどのように行うかをめぐって悩みを抱えるご家庭は多いのではないでしょうか。介護は現代の日本社会が抱える大きな課題です。これまで家族に頼りがちだった介護を社会全体で支えていく仕組みとして介護保険制度がスタートし、障害児者への支援としては障害者総合支援法上の各種サービスの整備が進み、2021年には医療的ケア児支援法が成立するなど、本人および家族への支援施策が広がりました。しかし、それでもなお介護者と介護を受ける人の生活の質を維持するには十分とはいえません。介護者の慢性的な睡眠不足や疲労の蓄積は介護うつなどの健康問題を引き起こすことにもつながりやすく虐待のリスクと背中合わせです。介護者も支援を必要とする存在であるにもかかわらずケアの担い手がおかれる状況は外からは見えにくく、社会からは孤立しがちです。

 京都市では24年11月に「京都市ケアラーに対する支援の推進に関する条例」が可決・制定され、今では介護者を意味するケアラーという言葉が広く知られるようになりました。私も仕事をしながら障害のある子どもを育てるビジネスケアラーであり、数年前には別の介護が重なるダブルケアも経験しました。介護は長期にわたるのでショートステイなどの活用で介護から解放される時間ができ、本当に助けられました。適度に距離をとり息抜きすることで自分を保つことができていると思います。

 介護には複合的なケア課題が含まれるので領域横断的な支援施策と相談窓口の整備が必要だと思います。介護を誰かに委ねることに後ろめたさを感じたり、介護の手を抜いていると思われないか、育児をサボっていると責められるのではないかと不安があるかもしれませんが、ケアラーが周囲に気兼ねせず、堂々と休息をとれる社会になってほしいです。緊急時に限らず普段の生活でも利用が可能となるなど、必要な人が必要とするときに柔軟に活用できるよう介護者の負担軽減になるレスパイトケアのより一層の充実を願います。

(就労継続支援事業所あむりた、白濵智美)