2025.07.15
2025.07.15
山田 正志(やまだ・まさし)さん
シェアハウスを運営(25/07/15)
困りごとを抱えた人、1人暮らし、学生など、さまざまな人が一緒に暮らすコンセプトのシェアハウス「ごちゃまぜハウス」が、京都市南区にある。オーナーは、山田正志さん(51)。ダウン症の息子(17)を育てながら、木工の会社を営んでいる。
「障害があってもなくても、いろんな人が助け合いながら暮らせる場所があればいいなと、ずっと思っていて。それぞれの得意を生かしながら、地域に溶け込んで暮らせる場を目指しています」
オープンは昨年12月。構想をもったのは、子育て真っ最中の7、8年前のことだ。息子が誕生した時、最初は「これからどうなっていくのか」と不安な気持ちになった。だが、夫婦で話し合い、「この子が『生まれてきてよかった』と思えることをやっていこう」と決めた。
息子の保育園や小中学校時代は、障害のない子との交流をたくさんもてる環境に恵まれ、できないことを助けてもらいながら楽しく過ごしてきた。だが、親亡き後の幸せを考えると、「自分たちが長生きすれば」と言いながら、本心は「課題だ」と思っていた。
そんなある日、布団の中で突如アイデアがわいてきた。「息子は計算や話は苦手だけど、掃除や同じ作業が得意。できないこともあるけれど、できることもある。それぞれ異なる困難を抱える人が一緒に暮らせばいいのでは」と。

「ごちゃまぜ」のコンセプトを思いついたきっかけの一つには、所属する中小企業家同友会のソーシャルインクルージョン委員会の活動がある。もともとは障害者雇用について考える取り組みだったが、親と暮らせない児童養護施設の子どもたちやひきこもりの人、元受刑者、ひとり親など、さまざまな困難を抱える人の雇用問題を勉強する活動へと拡大していく。「それらの困難をもつ人と障害者は、社会に受け入れられていない点、少しの配慮があれば乗り越えられることもある点で、変わりがない。困りごとが似通っていなければ、きっと助け合って生きられると思いました」
山田さんが経営する会社では、障害のある人や高齢者、ひきこもりがちな人たちが助け合い働いている。「会社では、苦手なことや弱みを見せ合う会をします。物忘れが多い私のことを一番フォローしてくれているのは、発達障害の人」。日常の仕事を通して、「お互いを知ることで、いろいろな問題を一緒に乗り越えられる」と感じている。
シェアハウスの理念は、「安心と幸せを分かち合う」。現在の入居者は3人だが、定員の5人まで増やし、働ける環境を整える構想もある。1階では、月に1回、地域食堂を開催している。500円でごはんを提供し、地域住民らが楽しみに集まり、40人ほどが入れ代わり立ち代わりやってくる。
「ここが、みんなが助け合ってご飯を作ったり、一緒に食べたり、家族のように過ごせる空間になれば。さらに、他の地域にも同じような取り組みが広がってほしい」。ごちゃまぜの共同生活が、多様な人たちの暮らしのモデルになることを夢見ている。
(フリーライター・小坂綾子)