2025.07.22
2025.07.22
京都新聞「愛の奨学金」贈呈式
京都新聞社会福祉事業団の2025年度「京都新聞愛の奨学金」贈呈式が5日、京都市中京区の京都新聞社で行われ、物価高騰の厳しい経済状況下、将来への目標と希望を抱いて学ぶ京都府・滋賀県内の学生・生徒計371人に総額3492万円が贈られた。奨学激励金も同日、16児童養護施設の高校生141人分が代表生徒らに初めて直接手渡された。
奨学金の内訳は、公募一般の部で高校生106人、大学生・専門学校生103人、交通遺児の部で高校生2人と大学生・専門学校生8人、公立高が推薦した定時制・通信制の部で11人。
公募による一般の部の申請には高校生207人と大学生・専門学校生192人、計399人があり、ひとり親家庭が半数を超えた。
大藪俊志・佛教大教授、石川紘嗣・京都青年会議所理事長、横江美佐子・京都市南青少年活動センター所長の選考委員3人が、成績や作文などで将来への思いや現在の学業に対する意欲をくみ選んだ。
贈呈式は3回に分けて開かれ、白石真古人常務理事と寄付者代表らが代表生徒に奨学金を手渡した。常務理事は奨学金の趣旨や選考の経過などを説明。多くの寄付者からの言葉も引用し、「その思いを胸に、夢や目標に向かって歩んでください」と話した。
大藪選考委員長は「多くの善意に支えられた奨学金を有意義に活用してください」、横江委員は「これから先も厳しい状況に直面した時には助けを求めてほしい。助けを求められる人は人を助けられる人、人に手を差し伸べられる人だから」と激励した。

奨学生を代表して2人の学生が謝辞を述べた。京都市立芸術大の安原添菜さんは「音楽を通して世界中の人に勇気や希望を届けられる歌手」を目指して声楽を学んでいる。「さまざまなことに挑戦し、何事にも全力で取り組みたい」とボランティア活動にも励み、昨年は「平和を考える」チャリティーコンサートを開催。京都市在住のウクライナの人たちに募金を届け感謝された。今秋には交換留学で英国に渡る予定で、奨学金はその準備の一部にも活用するつもりで「支えてくださる皆さまへの感謝を胸に日々精進してまいります」と結んだ。

舞鶴市出身の髙梨刀麻さんは、京都市内で一人暮らし。中小企業の支援を行いたい気持ちから税理士を目指して龍谷大で学んでいる。経済的な事情などで通信制高校、短大、4年生大学への編入を経験しており、「皆さんがそれぞれの事情がある中で頑張っていることを、本奨学金の報告で知ることができた。私とは違う境遇に立つ皆さんだと思いますが、私も負けずに頑張ろうと思います」と話し、感謝の思いを伝えた。

同奨学金は、事業団が発足した1965年以来続いている。高校生は年額9万円、大学生・専門学校生は同18万円が返済不要で給付される。奨学激励金は一人3万円が贈られた。
「人と違うこと徹して」 寄付者代表の米田さん激励

今回の贈呈式では寄付者代表として、昨年に高額寄付をした米田多智夫さん(84)が初めて生徒らに奨学金を手渡し、激励の言葉を贈った。
大津市出身の米田さんは京都市中京区で会長をするオーシャン貿易の創業50年を機に地域貢献として当初、福祉事業に3千万円を寄付する予定だった。奨学金事業を知り、若者の支援のため合計5千万円に増額した。激励の言葉では、自らの高校生時代からの労働や、貿易会社を興して世界を巡った成功や失敗の体験を語り「人と同じ事をせず、人と違うことを徹底してやれば必ず成功する。自分の目標を一つ持って、人生を歩んでほしい。これからの勉学の一助になればと援助者の一人として期待します」と話した。
同奨学金は、誕生日にちなみ年齢に100円をかけて寄付をする本紙の「誕生日おめでとう」コーナーへの寄付や、奨学金事業協賛寄付金、交通遺児のための寄付金などを加えて支給している。2024年から25年にも高額寄付が相次ぎ、山科区の女性から500万円、城陽市の森川久夫さんから1千万円、20年度から「困っている学生のために」と寄付を続けている左京区の匿名女性から2度計2千万円(当初からの累計では7千万円)など、無償の善意が届いている。
(ライター 山本雅章)