ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

コロナ禍を乗り越えて





 「コロナ禍を乗り越えて共生社会へ」。さわやか福祉財団が設けた「地域助け合い基金」のキャッチフレーズである。この基金は、全国から募った寄付金とわが財団が拠出する資金を元手にして、全国各地で活動している助け合い団体に対し、コロナ禍に対抗して行っている電話訪問や買い物支援などの活動資金を提供すると共に、コロナ禍を乗り越えた後、助け合いをさらに発展させるための活動資金も提供しようとするものである。

 スタート後28日の時点で、寄付者43名350万円、財団拠出3千万円、助成申込者は53団体申込額730万円。うち36団体460万円を助成済みである(財団HP参照)。

 助成を始めてしみじみ思い出したのは、30年前私が助け合いの世界に飛び込んだ頃のことである。あの頃は団体(今のNPO)をつくって行う助け合いが始まった頃で、「ご近所で困っている方を見捨てることはできない」と熱い気持ちで仲間を誘って始めた専業主婦のリーダーも少なくなかった。目の前に困っている人がいると、自分たちの体力の限界を忘れてどんどんやっちゃうし、やったことを記録するのも苦手。しかし、共生社会づくりに絶対必要なのは困っている人を助けたいという情熱で、それに比べれば計画性や事務能力などはやれる人に頼めばいいだけのものである。

 ただ、その後NPO法もできて、助成に必要な財務諸表もそろうようになったが、ここに来て、政府の財政が信頼できなくなってきたせいか、ご近所や町内会単位の助け合い活動などが再び芽を出してきている。それは共生社会に向けてとても喜ばしいことだが、助成申請を見ると、一体何に使うお金が必要なのか書面上分からないような申請も出てくる。

 「大切なのは、情熱。それが生きるよう、私たちは助成させていただく立場!」と掛け声をかけ合いながら、職員一同、情熱を形にする作業に取り組んでいる。



ほった つとむ氏
1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。