ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

宿縁をよろこ

真宗大谷派僧侶  川村 妙慶



あなたは自分の人生に満足していますか? 納得できた人は親や環境に感謝できるでしょうが、納得できないという方は「これは運命」として諦めないといけないのでしょうか。それはまるですべては生まれる前から決まっていると言われているみたいです。

しかし、すべての出来事は、因(いん)と縁(えん)によって成り立ち、そのことにより「どう生きるか」で結果が変わっていくのです。まず生きてみないとわからないのです。

私ごとですが、寺の子として生まれたものの、父(住職)が50代で亡くなり、その後、後継ぎを迫られた兄は重圧から逃げるように引きこもりになりました。同時にご門徒は他のお寺に全員移っていかれたのです。途方に暮れながら大谷専修学院(東本願寺経営)の門をたたきました。

そんな私に師は「ご縁ですね」と一言。「縁」で片づけられたことに反発した私に師は「父が亡くなり、兄さんが引きこもりになったから川村はここに来た。これがご縁なんだ」とおっしゃったのです。

「たまたま行信を獲ば、遠く宿縁を慶べ」(教行信証)。慶びについて親鸞聖人は「うべきことをえて、のちによろこぶこころなり」と言い表しておられます。

学院の門をたたいたのは私かもしれませんが、その私はすでに過去の歴史から多くの人に願われ続けてきていたのです。

私たちが何をするというのは、自分の意思のつもりかもしれませんが、「することが出来る」深い因縁をいただいているからです。親鸞聖人もお念仏を申す身となれたのは、自分の力ではなく、はるか遠い過去からの因縁があってさらに、法然上人とのめぐり遇いであったと感動されたのです。その因縁の不思議さに深い慶びでもって「宿縁」といただかれました。

良いことも、つらいことも私を育ててくれるご縁であったと慶び生きていきたいですね。今、父につけていただいた「慶」の一文字を味わっております。



かわむら みょうけい氏
アナウンサー。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。