ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
わたしの現場

母介護契機 家族の立場で
パーキンソン病患者ら支援

寺松 (てらまつ)由美子(ゆみこ) さん


 神経難病「パーキンソン病」と共に生き、悩みを抱える患者や家族の力になろうと活動する女性がいる。八幡市の寺松由美子さん(65)。NPO法人パーキンソン病支援センターを設立し、サロン交流会を開いたり、症状や生活の相談に乗ったり、多くの人たちを元気づけている。


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パーキンソン病の相談に応じる寺松由美子さん(提供写真)
 「パーキンソン病って症状やお薬が複雑で、医療や公的支援、そして金銭面などたくさん考えることがある。本人も家族も、何をどうすればいいのかわからない。その人の困り感がどこからくるのか、じっくり聞いて一緒に整理していきます」。患者や家族が元気になることが、何よりのやりがいだ。

 国の指定難病でもあるパーキンソン病。主に50代以降に発症してゆっくり進行し、手足の震えや筋肉のこわばりなど体にさまざまな症状が出る。近年は、運動症状以外にも、自律神経の症状や精神症状などが出ることがわかり、老化との見分けもつきにくく、本人も家族も不安になるケースが多いという。

 寺松さんは、パーキンソン病の母親を12年間介護した経験を持つ。活動以前は、勤めていた商業施設の施工会社から独立し、フリーランスで仕事をしながら姉と2人で母の生活を支えていた。当時は病気に関する情報が少なく、直前まで歩いていた母が突然倒れたり、目の前のコップが取れなくなったり、日々理解できない症状が出て困惑した。情報を求めて全国パーキンソン病友の会の扉をたたいて役員を務め、2006年、同会でも一緒に活動していた仲間とNPO法人を立ち上げた。

 月1回サロン交流会を開催し、今年3月まで15年間欠かさず、患者や家族らの交流の場を作ってきた。参加者は70代が中心で、最初は数人だったのが、今では約30人にのぼり、日常の話から医療的な話まで、さまざまな悩みを打ち明け合っている。また、年間30〜40件の個別相談があり、面談や電話で応じている。不安を抱えた患者や家族にとって、心強い存在となっている。

 「ストレスや不安感は症状を悪化させる。だからメンタル面のケアって、実はとても大事なのです。ご家族も含め、相談者の9割以上は話した後に元気になり、すっきりしたとか、気分が良くなったっておっしゃいますね」

 当初は患者の相談が多かったが、ここ3、4年、相談者の過半数は支える家族だ。夫や妻、そして最近では、親を介護する子どもからの相談も多い。目立つのは、仕事との両立や、「介護する家族がつぶれそう」という内容だという。

 「10年前に母は亡くなりましたが、最後5年間は脳梗塞で半身不随になって本当に大変だった。でも、主治医やケアマネさんら相談できる人がいて、心強かった」。専門職ではないが、家族の立場で、気持ちの持ち方や知っている情報を伝えて力になりたい思いが強い。

 自身は、5年前に食道がんを患った経験がある。「生きたい気持ちが強いせいか、全く死ぬ気がしなかった。病気を不幸だと思い始めると、とことん不幸になるけれど、人生って、考え方一つで変わる。そんなことも伝えていきたい」

 (フリーライター・小坂綾子)