ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都手話フェスティバル

手話通訳や介助に影響
支援を求める声次々と
コロナ禍現状、課題克服で意見交換 (2021/02/08)


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コロナ禍で聴覚障害者の暮らしや手話を取り巻く問題について真剣に話し合う関係団体の参加者ら(1月17日、京都市中京区・京都新聞文化ホール)
 第16回京都手話フェスティバルが1月17日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。手話スピーチや座談会で、新型コロナウイルスの感染拡大が聴覚障害のある人をはじめ、手話通訳者、介助者らに与えている影響について手話で厳しい現状を紹介し、課題について意見を交わした。

 同フェスティバルは、手話の普及や発展で聴覚障害のある人のコミュニケーションの充実を図るため毎年、京都府聴覚障害者協会と京都新聞社会福祉事業団が開いている。今回は感染拡大を受け、動画収録だけを行ってインターネットで公開することにした。第1部は「コロナ禍で感じたこと」をテーマに公募の7人が手話スピーチを、第2部は「コロナ禍で聴覚障害のある人の暮らしは? 手話は?」をテーマに座談会を行った。

 第1部の手話スピーチは、事前に撮影した映像を会場のスクリーンに映し出し、「当初はコロナ禍の様子がつかめず、感染予防などの情報も分からなかった」「仕事先での食事や遠方への旅行も制約を受けた」などと大きな影響を受けたことを各人が話した。

 「近寄らないで、大声でしゃべらないでと言われ、相手の口元はマスクで見えず、難聴者はお手上げ」と訴える女性も。視覚と聴覚に重複障害のある盲ろうの男性は、手指で伝達する「触手話」などコミュニケーション手段が制約される困難さを訴えた。「一時は盲ろう通訳介助員の派遣がストップ。通訳介助員は命と同じくらい大切な存在。ひきこもる状態になった人も」などと深刻な状況を伝えた。

 難聴の女性は「自分の姉妹と会うことも難しくなり、昨年4月に入院した姉の見舞いに行けず、9月に亡くなった」と切実な経験を紹介し、「普通の生活、活動・交流の場が必要」と求めた。

 第2部の座談会は4人が話し合った。府聴覚障害者協会の吉田正雄手話対策部長は府外の事例として、感染してホテルで療養しようとしたら「ドアのノックの音が聞こえないなどとして断られ、会社の寮で療養した例も。寮ではテレビがなくて情報も得られず、食事の確保も難しかったらしい」と述べ、聴覚障害者が安心して治療を受けられる態勢を要望した。

 京都手話通訳問題研究会の持田隆彦会長は「各種行事が中止になり、手話通訳者の派遣要請が減った。登録通訳者には給与の保障もない。通訳者は高齢化しており、自身の感染が心配になっている」などと手話通訳者が抱える問題を指摘。京都府や京都市に生活の苦しさを訴え、身分保障や感染対策を求めたことを紹介した。

 持田会長は「病院で通訳者が一緒では『3密になるので診察室から出て』と言われたとの報告があった」と、手話通訳への理解が広がっていない点にも言及した。

 京都府手話サークル連絡会の山苧謗q副会長は、府内の手話サークルは今年に入って再び活動を休止しているとしたうえで、「活動できなくて寂しいが、オンラインで工夫している」と、手話学習を継続していることを紹介した。

 オンライン活用は、手話スピーチでも学習会や会議の成功体験が報告されるなど関心を集めたが、座談会では「堪能な人の手助けがいる」「手話通訳者に若い人が少ない」などの課題も挙げられた。

 コーディネーターの同フェスティバルの村上達也実行委員長は、聴覚障害者の治療・療養や手話通訳者の身分保障、手話通訳者への無理解などについて「コロナ禍の中で課題はたくさんある。皆さんと一緒に運動して壁をひとつひとつ壊していきたい」と述べた。

収録動画を公開中
第16回京都手話フェスティバルは、動画投稿サイト「ユーチューブ」で28日まで配信しています。

第1部(手話スピーチ) https://www.youtube.com/watch?v=m9gxSl2ocR0
第2部(座談会) https://www.youtube.com/watch?v=o_uG59_JQQI