ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都新聞愛の奨学金

コロナ禍克服願う 市民の善意届ける
学生・生徒429人に4131万円(22/07/26)



 京都新聞社会福祉事業団の2022年度「京都新聞愛の奨学金」贈呈式がこのほど、京都市中京区の京都新聞社で行われた。京都府と滋賀県内の学生・生徒429人に過去最大だった前年度に次ぐ総額4131万円が贈られた。


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贈呈式で白石真古人常務理事から奨学金を受け取る学生・生徒の代表(9日、京都市中京区の京都新聞社)
 児童養護施設で暮らし看護系大学への進学を目指して2年続けて好成績を維持している高校3年生、病気の母親が働けず生活費や兄弟の学資のため、土曜日曜は朝から夜まで掛け持ちアルバイトを「はしご」する大学生など、ひとり親家庭や親の病気入院など種々の事情で学費捻出が困難な高校生、大学生、専門学校生らが受け取った。

 贈呈内訳は、公募一般の部で高校生99人、大学生・専門学校生136人、交通遺児の部で高校生5人と大学生6人、公立高が推薦した定時制・通信制高校生の部で15人。また後日、奨学激励金を児童養護施設の高校生168人に贈った。大藪俊志・佛教大社会学部准教授ら4人の選考委員が成績に加え、作文などで将来に向けた思いや現在の学業に対する意欲をくみ選んだ。

 贈呈式は新型コロナウイルス感染対策を徹底した上で4回に分け開催し、白石真古人常務理事が代表の学生・生徒に奨学金を手渡した。白石常務理事は奨学金の趣旨や選考の経過などを説明。「多くの寄付者の思いをしっかりと受け止め、奨学金を大切に有意義に使ってください。困っている人がいたら手を差し伸べ、助けられる人になって」と激励した。大藪選考委員長のコメントも代読された。

 式に出た芸術系大学に通う学生は、進学のために自ら3年間働いて学資をためて今春入学した。「将来、人の心を動かすような映画制作を」と学業専念を誓い奨学金を申請した。今春の大学入学時に父親が亡くなり経済環境が急変した中、京都市内で幼児教育を学ぶ学生は「コロナ禍でまだリモート授業も多いが、早く現場実習ができるようになり、子どもたちと触れ合って、勉強したい」と意欲を見せた。

 コロナ禍の影響は依然続いており、医療系学校で看護師を目指す女子学生は、ひとり親家庭の父親の収入減少の上、規則でアルバイトもできず、奨学金に応募したという。中学時代の「生徒に寄り添ってくれた先生」の影響で「生徒のことを第一に考えられるような教員」を目標にする大学4年生は、母親の収入や妹の学費、自身のアルバイト収入の減少を苦慮しながらも、教員採用試験に向け勉学に集中したい思いを語った。病気を抱えて働く母親を気遣いながら経済的な自立のためにも海洋関係の資格取得を目指して学ぶ高校3年生は「奨学金は今後も勉強に取り組んでいくモチベーションにもなる」と話していた。


京都新聞愛の奨学金
 同奨学金は1965年以来、経済的事情など厳しい条件にもめげず、将来への目標と希望を抱いて学ぶ学生・生徒を支援する趣旨で続いている。京都新聞紙上の「誕生日おめでとう」コーナーへの寄付や奨学金事業協賛寄付金、交通遺児のための寄付金などを加えて支給。返済不要の給付型で、高校生は年額9万円、大学生・専門学校生は同18万円、児童養護施設高校生の奨学激励金は同3万円。
 選考委員は、大藪俊志佛教大社会学部准教授委員長、奥村美佳京都市立芸術大准教授、角田尚大京都青年会議所理事長、村井琢哉山科醍醐こどものひろば理事長。