ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都新聞愛の奨学金

厳しい経済状況下 善意で希望後押し

学生・生徒407人に3921万円(23/07/24)



 物価高騰の厳しい経済状況下、将来への目標と希望を抱いて勉学する京都府と滋賀県内の学生・生徒を支援する京都新聞社会福祉事業団の2023年度「京都新聞愛の奨学金」贈呈式が今月8日に京都市中京区の京都新聞社で行われ、合計407人に総額3921万円が贈られた。

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代表の学生が謝辞を述べた
 内訳は、公募一般の部で高校生100人、大学生・専門学校生128人、交通遺児の部で高校生4人と大学生6人、公立高が推薦した定時制・通信制の部で11人。

 19日には児童養護施設の高校生158人に奨学激励金が贈られた。大藪俊志・佛教大教授ら3人の選考委員会が、成績や作文などで将来に向けた思いや現在の学業に対する意欲をくみ選んだ。

 一般の部には高校生182人と大学生・専門学校生238人、計420人から申請があった。ひとり親家庭が半数を越え、物価高、親の失業、病気入院など困難な事情を申請理由にあげた。

 贈呈式は2回に分けて開かれ、白石真古人常務理事が代表の学生・生徒に奨学金を手渡した。常務理事は奨学金の趣旨や選考の経過などを説明。多くの寄付者からの言葉も引用し、「その思いをしっかりと受け止め、奨学金を大切に有意義に使ってください。困っている人がいたら手を差し伸べ、助けられる人になって」と激励した。

 同奨学金は、事業団が発足した1965年以来続いている。誕生日にちなみ年齢に100円をかけて寄付をする本紙の「誕生日おめでとう」コーナーへの寄付や、奨学金事業協賛寄付金、交通遺児のための寄付金などを加えて支給している。高校生は年額9万円、大学生・専門学校生は同18万円が返済不要で給付される。奨学激励金は3万円が贈られた。

 困っている学生のためにと20年度から1千万円以上の寄付を続けている匿名の女性から今年度も、1千万円の寄付があり累計5千万円となった。夫人の遺志を承けた男性の寄付500万円など、無償の善意が続いている。

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贈呈式では代表の生徒(右)に白石真古人常務理事から奨学金が手渡された(8日、京都市中京区の京都新聞社)
 贈呈式では滋賀大3年の男子学生(21)が「公務員試験受験や卒業論文準備の資金に奨学金を充てたい」との目標を踏まえ、「心強い支援であり、寄付者の期待に応えて社会に貢献できる人材になりたい」と謝辞を述べた。京都芸術大で写真を学ぶ女子学生も、教材や制作費に充てるとし、「卒業制作や就職活動に向け、大きな支えとなっている」と感謝した。

 式に出た、病気の祖母らの介護をする母親と姉と3人で暮らす滋賀県の高校3年生は、英語を使う仕事に就くための大学進学に向け、検定試験に複数受かるほど勉学に励む。大学進学後は、海外での就職などの希望を抱き、介護のためにパートでしか働けない母親を思い「少しでも早く母を支えたい」と考えているという。

 親元を離れて京都市内の高校でスポーツに打ち込む女子生徒は全国大会で優勝する実績を上げ、医療現場で働こうと看護学科で学ぶ滋賀県の女子学生、農業科の教員免許取得を目指す京都の女子学生らも意欲的に学業に励むなど有意義に活用していく様子がうかがえた。