ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

朗読ライブボランティア「拍子木の会」

明るく楽しく、聴いていただく
新聞拾い読みや川柳、合唱も(2020/10/19)


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介護サービス施設を訪れて朗読ライブを熱演する拍子木の会メンバー (7月17日、長岡京市井ノ内)=提供写真

 黄色いポロシャツに黄色いジャンパー。そろいのユニフォームの女性メンバーたちが、「チョンチョンチョン」と小刻みに鳴る拍子木の音に導かれて登場してくる。全員が出そろったところで、ひときわ高くチョーンと鳴らし、聴衆に一礼して前口上。「みなさま、これより朗読ライブを始めさせていただきます」

 「拍子木の会」のオープニングスタイルは結成以来、変わらない。拍子木は、開幕だけでなく紙芝居やクイズなど、演目ごとの最初と最後に必ず鳴らされる。

 「朗読好き、お話し好きが集まってつくったグループです。好きですることがボランティアにつながる喜びを、みんなで自覚。聴いてくださるお年寄りの笑顔、子どもたちのきらきらしたまなざしをやりがいに、続けてきました」。会の代表、藤原つる代さんは、これまでの活動をそう振り返る。

 「拍子木の会」は、朗読や音訳のボランティア活動が盛んな長岡京市で2002年に誕生した。当初は同好者グループが集まる団体に所属。実力をつけた12年から独自の活動に乗り出した。

 朗読ライブは、定期訪問先の介護サービス施設や保育所で奇数月に4回開き、1回が50〜60分。お年寄りには小話や川柳、新聞拾い読みのほか、歌謡曲合唱、口を動かす体操などを取り入れて盛り上げ、子どもたちは紙芝居やなぞなぞで引きつける。小学校と幼稚園、長岡京市などからの不定期なライブ要請にも応じている。

 活動のモットーは「明るく楽しく朗らかに。和をもって貴しとする」。「聴かせてあげるのではなく、聴いていただく」の戒めも守ってきた。ライブのない偶数月は企画会議を開き、各回ごとに変える台本の作成と練習に専念する。

 最盛期は15人近い会員を抱え、毎月の朗読ライブを続けたが、ここ数年は会員の高齢化が進み草創期メンバーが次々に抜けて、実数は5人を切った。それでも拍子木でメリハリをつける進行と、テンポよい語り口、バラエティーに富んだ演目は好評で、お年寄りを中心に根強いファンが多い。

 8年前に入会して会計なども担当する小山節子さんは、活動は自分のためでもある、と語る。「やっている自分が楽しく、聴いてくださる人たちも楽しい。そんな関係を築けていることがうれしく、生きがいにもなっています」

 新型コロナウィルスの感染拡大で、ことしは3月以降の朗読ライブは、7月の1回を除き全てストップした。会員たちは、ライブを休止してみて「あらためて、人前で朗読できることのありがたさが分かった」と、口をそろえる。

 設立20年が近づくいま、最優先の課題は、新しい会員を多く獲得して朗読ライブの灯を引き継ぐこと。11月には長岡京市社会福祉協議会主催の朗読ボランティア養成講座で、受講者に入会を促すプレゼンテーションの機会が与えられる。ライブを実演して「1人でも多く勧誘したい」と会員たちは今夏から、集まるたびに練習に打ち込んでいる。

拍子木の会
長岡京市内の主婦らでつくる朗読ボランティアの任意団体。設立は2002年。市社会福祉協議会のボランティアセンターに登録して介護サービス施設や保育所などで活動を続けている。連絡先は市社協075(963)5508。