ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

NPO法人城山共同作業所

仕事は自己現実の営み
農業・縫製・清掃… 挑戦多彩に(2021/05/17)


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作業所に隣接する広さ約7アールの野菜畑。多くの野菜が育てられ連日、農作業が続く(7日、南丹市八木町)

 青いネギが背丈を伸ばし、ジャンボニンニクの大きな葉が畝を覆っている。連休明けの曇り空の朝、JR吉富駅に隣接した城山共同作業所(南丹市八木町木原)の野菜畑では、カボチャの苗植えが行われた。「苗を踏まないよう、大切に」。くわを手に集まった作業所の利用者たちは、体を寄せ細心の注意で作業を続けた。

 野菜栽培などの農業は、作業所が2009年に就労継続支援B型事業所の指定を受ける前から取り組んできた。市内3カ所にある専用の畑ではサツマイモ、ダイコン、タマネギ、丹波黒豆などが育つ。

 ほだ木約千本を並べた露地のシイタケ栽培場も持ち、採れた直売品は地元で引っ張りだこの人気という。6年前に始めた特産・山の芋の栽培は、専門農家から秘伝の技術を習得。毎秋、大玉を実らせ南丹市のふるさと納税返礼品にも選ばれた。

 「農業は野外作業なので厳しさの半面、収穫の喜びは貴重。育てた野菜は市内の学校給食でも使っていただいています。売り上げは天候に左右されますが、誇りを持てる大事な仕事です」。施設長の高向一統さん(48)は、仕事は利用者の自己実現の営みととらえ、その中からの成長と変化を見守ってきた。

 創設は35年前、旧八木町内に間借りした民家からスタートした。応援ボランティアの人々と共に開設に奔走したのは地元の元小学校校長で、03年まで作業所所長を務めた今西新さん(昨年死去)だった。障害児教育に熱心で、移転後の作業所敷地や野菜畑も今西さんが自分の所有地を提供した。

 現在の作業所は定員30人で、障害の種別は問わず、働く意欲のある人を受け入れる。「利用者さんが、自分のしたいことをかなえる力をつけるための支援」を合言葉に、多彩な仕事を手がけている。

 農業のほかに、空き缶回収と手袋、手ぬぐいなど手芸品の縫製加工は長く続けてきた定番の仕事。近年は公共施設や駅舎周辺の清掃・除草、市広報紙の仕分けなど請負の仕事を増やした。祭りなどのイベント出店は年間約60回を数え、野菜や自家製品販売のほか、鉄板で焼きそばを作ることもある。

 手芸品担当の職員、明田久見子さんは「一般就労可能な技術レベルの利用者さんもいますが、心の弱さを克服したり、職場の人との融和も覚えてほしい。それを助けるのが私たちの仕事」と話す。

 新しい分野の仕事にも積極的に挑戦した結果、1人当たりの平均月額工賃は3万3978円と、この10年でB型事業所平均のほぼ2倍にまで伸びた。ただ、高齢の利用者や障害の軽重に配慮して高い工賃だけにとらわれず、誇りを持って働ける仕事選びと職場づくりにこだわっている。

 人や仕事が増え、二つ目の作業所を検討してよい時期だが、高向さんらは安心して働けるためのグループホーム開設も重視する。「保護者さんは、子どもの将来の生活をどう作るかが最も気がかりなのです」。作業所にとって、生活施設を運営する力を付けるのは大目標の一つで、保護者の力も借りながら準備を進めたい、としている。

城山共同作業所
1986年、利用者5人、職員1人からスタート。93年、南丹市八木町木原に移転。2008年、NPO法人となり翌年、就労継続支援B型事業所の指定を受けた。利用者は10〜60代の24人、職員12人。